24/07/03 10:00 投稿
低層、タワマン、大規模、団地。マンションの種類によるメリット&デメリットは?|マンション購入にまつわる素朴な疑問VOL.4
リノベーション・ゼミナール
多くの人にとって、大きな買い物となるマンション購入は初めての経験で分からないことだらけ。そこで、
毎回キーワードをひとつピックアップし、知っておいたほうがいいこと、注意すべき点について分かりやすく解説します。
「リライフプラス vol.50」掲載
illustration:tatsuki oshimoto
edit:noriko sasaki
教えてくれた人 井出 武さん
学べるマンションメディア「マンション図書館」(https://mansionlibrary.jp/)の館長。1989年マンションの業界団体に入社。以後不動産市場の調査・分析、団体活動に従事。現在、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員として、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。
マンションの種類によるメリット&デメリットは?
マンションを探すとき、価格はもちろん、立地や間取りなど、様々な条件や項目を考慮して検討すると思います。今回は、マンションの規模や種類によるメリット&デメリットを検証。マンションの規模で選ぶという人は少ないかもしれませんが、ライフスタイルに合わせて適切な種類や規模のマンションを選ぶことが、満足のいく住み心地や暮らしにつながります。
そこで、低層マンション、タワーマンション、大規模マンション、団地の4タイプについて、それぞれのメリット&デメリット、どんな人に向いているのかについて詳しく解説します。
低層マンション
そのほかに、第1種低層住居専用地域もしくは第2種低層住居専用地域にある、建物の高さが10~12m以内、総戸数が少ない、敷地面積が大きく緑が多い、などの特徴があります。
メリット
落ち着いた閑静なエリア
低層マンションのほとんどが第1種もしくは第2種低層住居専用地域に建てられています。
これらの地域は、建物の高さや建ぺい率、容積率、建物の用途などが厳しい制限を受けているため、敷地が広く低層住宅が建ち並ぶ、落ち着いた閑静なエリアといえます。
耐震性
低層マンションの多くで採用されている「壁式構造」は、柱や梁を使用せず、四方の壁・床・天井という面で建物を構成しているため、耐震性に優れているといわれています。
また、地震の際、高層マンションに比べると揺れが少ないのが特徴。
地面に近い安心感
低層マンションに多いのが3階建て。「地に足がついた暮らし」ができるという安心感が大きなメリットです。
また、停電などでエレベーターが止まってしまい階段を使わなければならない場合でも、あまり不便を感じることなく暮らせます。
デメリット
物件価格が高い
第1種もしくは第2種低層住居専用地域は、建物の高さや建ぺい率に厳しい制限があるぶん、敷地に占める建物の割合が少なくなります。
そのため、敷地面積に比べて戸数が少なく、1戸あたりの物件価格が高くなる傾向に。
物件数が少ない
低層マンションは、タワーマンションや大規模マンションに比べて、1棟あたりの戸数が非常に少ないという特徴があります。
また、居住している人はその住環境のよさから長期間にわたって住み続ける傾向が強いため、中古物件を見つけるのが困難なことも。
資金が不足している場合一時金が高額になる可能性あり
低層マンションは戸数が少ないので、もし修繕積立金が不足している場合、大規模修繕などの大掛かりな工事が必要になると、一時金などの出費が高額になる可能性も。
また、低層の高級マンションは外観や共用部の植栽などがつくり込まれているぶん、それを維持するための管理費が高くなる場合も。
タワーマンション
メリット
日当たりや眺望が期待できる
立地や階数にもよりますが、タワーマンションは眺めのよさが魅力です。展望室やラウンジがある物件も。
また、近くに同等の建築物がない限りは、基本的に周囲の建物に日射を遮られることがありません。
共用施設やセキュリティが充実している
1階にジムやオーディオルーム、さらに高級なタワーマンションになるとゲストルームやジャグジー付きのお風呂があったりと、共用の施設が充実しているのが特徴。
また、エントランスが広く、コンシェルジュがいるケースが多いのでセキュリティ面でも安心。
耐震性
高さ60mを超える建築物には、国によって構造の強度や安全性に関する厳しい建築基準が定められていて、その基準を満たした場合にだけ建設が認可されます。
タワーマンションは、1981年に改正された新しい耐震基準を満たす強度の構造や高い耐震性が求められます。そのため、地震による倒壊のリスクが低い建築物だといえます。
デメリット
エレベーターの待ち時間が長い
20 階以上のタワーマンションは、必然的にエレベーターの待ち時間が長くなりがち。朝の通勤・通学の時間帯は、特に待ち時間が長くなることが想定されます。
また、高層階に住んでいる場合、利用者が少ない時間帯でも上下を行き来するだけである程度の時間がかかります。
災害に備えた準備が必要になる
地震に対応するための高度技術を駆使した構造が用いられているため、崩壊する恐れは低いものの、地域インフラ(水道、ガス、電気)が被害を受けてしまった場合、断水やガスの遮断、停電の可能性は排除できません。
エレベーターが使えなくなることを想定して、特に高層階に住んでいる人は食べ物や飲み物、防災グッズを備えておく必要があります。
管理コストが高い
メリットで触れた「共用施設やセキュリティが充実している」という便利な面を享受するために、管理費が高くなってしまうのがデメリット。
コンシェルジュが常駐している場合は、その人件費なども発生します。
首都圏の物件数ベースでは、50戸未満の小規模マンションが供給の大半を占めるという結果に。ただし、戸数ベースでは200戸以上の大規模マンションまたはタワーマンションが3割以上。これは、都心になればなるほど、駅前再開発などによる大型プロジェクトが増えていることが要因と考えられます。
一方、近畿圏と中部圏では、50戸以上100戸未満の中規模マンションが物件ベース・戸数ベースともに最大のシェアを占めています。
大規模マンション
タワーマンションで200戸以上の場合もありますが、ここでは20階未満で200戸以上のマンションを大規模マンションと定義します。
メリット
マンション内に公園や商業施設があり利便性◎
マンションの中に公園があったり、保育施設や病院、コンビニなど、いろいろな商業施設が一緒に建てられているケースが多いので、商業&生活利便性が高いという特徴が。
以前は郊外に建てられることが多い傾向にありましたが、最近は駅近の物件も増えています。
管理費が割安になることも
戸数が多いことで、一戸あたりの管理費は割安になります。ただし、豪華な共用施設が多数あるマンションの場合は、高額になることも。
また、戸数が多いので、マンションの管理組合の理事が回ってきにくいという面も人によってはメリットに。
物件数が多く見つけやすい
大規模マンションは、低層マンションなどの小規模マンションに比べて、1棟あたりの戸数が多いという特徴があります。
そのため、中古物件として市場に出回る戸数も多く、見つけやすい傾向にあります。
デメリット
居住者の意見がまとまりにくい
住人の数が多いぶんたくさんの意見が生まれるため、管理組合の業務が煩雑になりがち。総会や臨時総会など、取り決めごとや決議などがまとまりにくくなります。
これは大規模マンションだけでなく、総戸数が多いタワーマンションも同様。
築年数とともに住民が高齢化する可能性が高い
大規模マンションの場合、ファミリー向けの間取りを採用しているケースが多いので、住民の年齢層が30代~40代に集中しがち。
そうすると、住民が一斉に高齢化してしまう可能性も。併設されていた商業施設が閉店したり、若い人向けのお店がなくなって活気が失われてしまう、といった様々な問題が発生する可能性も。
団地
基本的に5階以下でエレベーターなしのものが多いのですが、なかには5階以上でエレベーターがあるものも。昭和の高度経済成長期に建設ラッシュを迎え、当時の住宅需要に応えた重要な存在でした。
メリット
物件価格が安い
おもに市区町村や都道府県が管理している公社の団地と、独立行政法人である都市再生機構が運営している公団の団地があり、いずれも同様の広さの民間のマンションと比べると物件価格が手頃なのが特徴。
敷地が広く、ゆったりと建てられている
団地は、広い敷地に余裕をもって建てられていることが多いもの。棟と棟の間が芝生や公園になっている場合もあり、距離感が保たれているので独立性も◎。
一般的に公園が多くて緑が豊か
団地は、大規模な開発事業として建設されることが多く、住環境の整備に力を入れています。
そのため、広い敷地内に公園があったり植栽がされているなど、緑が豊かな傾向に。
デメリット
住民の高齢化が進んでいる
昭和50年代に多く建てられた団地には、当時20代から40代くらいの子育て世代が同じタイミングで入居しました。その住民たちが同じように年を重ねてきたため、現在は団地の高齢化が問題に。
高齢化が進むと、空き家の増加や独居老人の孤独死といった様々な問題が生じ、コミュニティ全体も活力を失ってしまう傾向にあります。
築年数が古い場合は耐震性の問題あり
建物の耐震基準は、建築基準法で定められていますが、おおむね昭和56年6月までに着工した住宅は「旧耐震基準」、昭和56年7月以降に着工した住宅は「新耐震基準」となっています。
団地の多くは昭和50年代に建てられたものなので、なかには「旧耐震基準」で建てられたものもあり、耐震性が十分とはいえない団地も。
リノベの際に注意が必要
団地の多くは、柱や梁を使用せず、四方の壁・床・天井で建物を構成する「壁式構造」という構造でつくられています。そのため、リノベの際に壁を取り壊して広い間取りに変更できないという制限も。
また、排水管が階下の天井裏に設置されている場合、キッチンなど水回り設備の移動などが難しくなります。
低層、タワマン、大規模、団地、それぞれどんな人に向いている?
また、第1種もしくは第2種低層住居専用地域は比較的治安がいいエリアが多いため、防犯面でも安心して暮らすことができるでしょう。
低層マンションは地震に強い構造で建てられているので、災害時に備えたい人は低層マンションが向いているといえます。
通勤時間を短くしたい人や、にぎやかな場所に住みたい人、飲食店やスーパーなどが多い便利さを優先したい人に向いています。
また、マンションのセキュリティ性が高いのもメリット。都会でありながら、防犯面での安心が得られます。
大規模マンション
小さな子どもがいるファミリー層向け
大規模マンションは、専有面積が70~80㎡で2LDK~3LDKのものがメイン。
敷地内に公園があったり、保育施設、コンビニなどの商業施設が併設されていることが多いため、子どもがいるファミリー層におすすめです。
タワーマンションも近隣に商業施設などがあり利便性がいいものの、物件価格が高額なものが多いため、予算に合わない可能性も。
また、大規模マンションには、キッズルームやラウンジなど豊富な共有設備が完備されている場合もあり、子どもの年齢が近い家族と知り合うきっかけにもなります。
団地
利便性よりも価格重視タイプの単身者や夫婦向け
団地は駅から遠い場所に建っていたり、高速道路沿いや幹線道路沿いに建っていることが多いので、リタイアした人やリモートワークがおもな人など、公共交通機関の利便性をあまり重視しない人に向いているといえます。
広さは50㎡程度のものが多く、単身~ふたり暮らしの人に向いています。
また、マンションに比べて安価なので、予算は少ないけれどマイホームが欲しいという価格重視タイプの人にもおすすめ。
オートロックがついていない団地が多いので、防犯面が気になる場合は、2 階か3 階あたりを選ぶのがベター。
国土交通省が行ったアンケートによると、マンション購入の際に考慮した項目は、「駅からの距離など交通利便性」が72.6%と最も多く、その次に「間取り」が63.7%、「日常の買い物環境」が52.8%など、生活環境に関する項目で半数を超えるという結果に。
一方、防犯性能や耐震性、共用部分や共用施設については、優先順位がそれほど高くないことがうかがえます。
■「マイソク」って何?|マンション購入にまつわる素朴な疑問VOL.1
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■低層、タワマン、大規模、団地。マンションの種類によるメリット&デメリットは?|マンション購入にまつわる素朴な疑問VOL.4
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