21/03/31 10:00 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(ペット編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス Vol.39」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
6年間の法律事務所勤務を経て、2010年に東京都新宿区に桑田・中谷法律事務所を開業。自身のマンション購入を機にマンション管理士資格を取得し、マンショントラブルや会社の経営、個人間のトラブルなど多岐にわたり相談を受けている。
隣の部屋の人がベランダで犬のトリミングをしていてその毛がわが家の排水口に…。
ご相談したいのは、隣に住むBさんについてです。わが家とBさん宅は、ベランダが横並びになっている構造で、壁で仕切られてはいるものの少し隙間があり、ベランダの溝がつながっています。
長毛犬を飼っているBさんは、ベランダで犬のトリミングを行っているようで、その抜け毛がベランダの隙間を通じてわが家側に入ってきて、排水口を詰まらせてしまうので困っています。
そもそもこのマンションはペット可物件ですし、わが家でも猫を飼っているので、多少の問題には目をつぶるべきだとは思っていますが、他人の飼っている犬の毛の処理を日々しなければならないのは納得がいきません。
また、その犬がよく吠えるのですがその鳴き声が昼間だけならまだしも早朝や深夜にも…。わが家の周辺は住宅街で静かな環境なので、余計に鳴き声が気になってしまい、ときどきイライラしてしまう自分がいます。
ただ、お隣に住んでいますし、私は今後もここに住み続けたいと思っているので、もめごとにはしたくないというのが正直な気持ちです。どういう方法でお願いすれば大きな問題にならずに改善してもらえるでしょうか。
(千葉県・Aさん・40代女性)
隣人同士の問題には管理組合は直接には関知しないと思われますが、「ペットの飼い方について一部の住人から苦情が出ています」、と匿名で張り紙を掲示するなどの対応はしてくれるもの。そもそもベランダは専有部分ではなく共用部分。マンションの管理規約や細則に定められているルールがあり、ベランダにペットを出すことを禁止したり、ブラッシングを禁止する例が多いでしょう。
それでも改善されなかった場合は、理事長が了解してくれれば間に入ってもらい当事者間での話し合いを申し入れるか、弁護士に依頼して細則違反を行っているという通知書を出すなどの選択が考えられます。鳴き声に関しては、ペット可物件に住んでいる時点で、多少の鳴き声があることは前提になると思います。
また、苦情を申し立てているのがAさんひとりだけだと騒音の感じ方の個人差という問題にされるかもしれません。音は上階に響くものなので、Bさん宅の上階の住人の方にヒアリングしてみてはいかがでしょうか。Aさん以外にも困っている人がいるとなれば、マンション全体の問題ということになり、管理組合にも間に入ってもらいやすくなりますし、改善要求が行いやすくなるでしょう。
実際の事例の一部を修正しています。
【CASE1】多頭の野良猫に餌付けし続ける住人のせいでそこかしこに悪臭が漂っていて耐えられない!
親の所有するマンションの一室に住み、野良猫に餌付けしていたCさん。部屋のみならずマンションの通路を猫が行き交い毛や足跡で汚れ、糞尿もあちこちに…。
この惨状に住民全員が耐え切れず、管理組合を通して苦情を申し立てました。しかし、Cさんは「動物愛護だ!」と言って言うことを聞きません。
そこで、悪臭を伴う用途、環境的に好ましくない用途、居住者に迷惑をかけるような行為を禁止している管理規約をもとに、ペット飼育禁止の仮処分の申し立てを起こし仮処分が認められました。
それにも従わなかったので建物引き渡しの裁判を起こして勝訴しましたが、引き渡しがされなかったので強制執行も実行。
裁判ではCさんとその親への臭気測定報告書の費用30万円と弁護士費用の請求も認められましたが支払われなかったので、今度は専有部分の競売を申し立てましたが、結局は任意売却され、その売却金額の中から諸費用を回収して幕を閉じました。
このマンションは1歩足を踏み入れただけでその悪臭が鼻をついてくるほどひどい状況でした。住民が一致団結したことと、臭気測定を行ったり共用部分である廊下の惨状を撮影したりして証拠として提出し、惨状を可視化できたのが大きかったです。
【CASE2】猫がかわいいのはわかるけど…このマンションペット不可って知ってて住んでます?
相談者はこのマンションの管理組合。ペット不可のマンションでしたが、1階の住人Dさんが室内で猫を飼っていたうえに、庭にくる野良猫にも餌付けをしており、庭に通じるフェンスに野良猫が出入りできるよう穴まであけているとのこと。さらに餌付けしている野良猫がマンションのドアに放尿していくことにも頭を悩ませていました。
総会において野良猫などへの餌付けを禁止するという決定を下しましたが、それでもやめなかったため、相談に来られました。
猫の飼育の禁止に関する規定があるので、それをちゃんと提示して猫を親族や友人に託すなりしてください、そうでなければ裁判を起こしますよ、とDさんに伝えるようにアドバイスをしました。
Dさん自身もペットを飼ってはいけないことは理解していましたが、猫たちを手放すことはできない…となり、最終的にはその猫たちと一緒に引っ越すことに。またDさんが、フェンスの穴を補修し、解決に至りました。
ペット不可物件と知りながらも猫を飼ってしまったDさん。一度飼ってしまうと愛着が生まれ手放すのは難しくなります。弁護士が前面に出ると相手の態度が硬化するリスクがあったので、アドバイスにとどめたのが今回のポイントでした。
【裁判ではこんな判例も!】ペット禁止の規約を新設。現在犬を飼っている住人の承諾は必要?
ペット飼育に関する規定を設けていないマンションが管理規約で犬、猫のペット飼育を禁止する条項を新設する規約の改正に関して、組合員の承諾が必要か否かが争われた裁判。
以前から犬を飼っていた原告のE氏が区分所有法31条において、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」とあるが自分の承諾を得ていないから規約は無効と主張。
しかし、裁判所は、犬が盲導犬のように、飼い主の日常生活・生存にとって特段の事情がある場合には、その動物の飼育を禁止することは飼い主の生活・生存自体を制約することになり特別の影響を及ぼすといえるが、今回のケースではE氏の家族の生活・生存にとって客観的に必要不可欠の存在であるなどの特段の事情があることを認めるに足りる証拠はないので、規約改正はE氏の権利に特別の影響を与えるものではないという判決を下した。
1994年の東京高裁の判決で、管理規約にペット禁止が明確に定められていなかったケース。ただ、ペットへの意識がずいぶん変わってきているので、飼育細則を改正する際には管理組合も慎重に対応する必要があると考えます。
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