あるある!マンショントラブルのケーススタディ(総会決議の無効&不成立編)

リノベーション・ゼミナール

大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!

「リライフプラス vol.42」掲載

illustration: koutaro numata

text: noriko sasaki

design: machiko hirata

桑田英隆弁護士

​6年間の法律事務所勤務を経て、2010年に東京都新宿区に桑田・中谷法律事務所を開業。自身のマンション購入を機にマンション管理士資格を取得し、マンショントラブルや会社の経営、個人間のトラブルなど多岐にわたり相談を受けている。

初めて総会の議長を務めます。総会決議が無効になることもあるって聞いたんですが本当?

8年前に現在のマンションの一室を購入し暮らしています。全部で20戸と小規模で自主管理のマンションでして、管理組合の理事は輪番制で決められています。

今回、初めて理事長をやることになりました。私が理事長になって最初の定期総会の議案内容は大規模修繕の実施について。この総会を開くにあたり、とても不安を感じています。というのは、総会で議案が可決されても、無効になるケースがあると前任の理事長さんから聞いたからです。

私は法律に関して素人ですし、どういう場合に決議が無効になるのかまったく分かっていません。そもそも決議が無効になることってあるのでしょうか?管理会社が入っていないので、相談することもできず…。

現段階で、大規模修繕反対派と賛成派がほぼ半々ということを聞いています。大規模修繕には多額のお金が必要になりますし、スムーズに議案が決議されるとも思えず難航しそうなことも大きな不安要素です。

苦難を乗り越えて出した決議がひっくり返るようなことになっては元も子もないので、決議が無効にならないようにするためには、どのようなことに注意したらいいか、教えてください。

(神奈川県・Aさん・40代女性)

KUWATA’S ANSWER!
決議が無効にならないために手続きなどの形式面、説明や回答の用意などの内容面、両方をしっかり備えましょう

多くはないですが、裁判を経て決議が無効となるケースはあります。そうならないためには、形式面と内容面を押さえておくことが重要。

形式面では【招集通知を出す宛先と期間を守る】ということ。
区分所有者が対象物件に住んでいる場合はポストインも可能ではありますが、マンションの外で暮らしている人の場合は、管理組合に届け出があった住所宛に郵送する必要があります。また通知は、通知する日と会議を開催する日を除き、会議を開く2週間前までに行わなければなりません。つまり、通知する日と開催する日を含めると16日間必要ということ。なお、通知する日とは、ポストインした日、または発送した日になります。

内容面では、説明義務違反とならないよう【シナリオの作成】と【質疑に対する回答の用意】が大切。
シナリオは、議長の発言や議案の内容について記載した進行表です。【質疑に対する回答の用意】は、大規模修繕のケースだと「相見積もりを取ったのか?」や「前回の修繕からどのくらいの期間が経っているのか?」などの質問が想定されるので、その回答になります。

また、後々言った言わないでもめないように録音しておくと、さらに安心でしょう。

桑田弁護士が実際に相談を受けた【総会決議の無効&不成立】トラブル事例

実際の事例の一部を修正しています。

【CASE1】役員に立候補したのに、議案に載せずに総会開いて決議するって法律違反では!?

管理組合の新しい役員を決めるにあたって、輪番制と立候補制の両方を採用していたところ、過去にトラブルを起こしていた組合員のCさんが立候補届を提出。

しかし、今回の相談者の理事長であるBさんたち役員は、Cさんは役員にふさわしくないとして、役員選任議案にCさんの氏名を掲載せず、新役員を選ぶ総会を開き決議を取ったため、Cさんが役員に選任されることはありませんでした。

そこで、Cさんは「立候補者を募集していたのに、自分だけ名前を載せないのはおかしい!」として、総会決議無効を申し立てたことに対応したケース。

そもそも理事会が提出する総会議案なので、その内容について裁量を有するのは理事会。裁判では、過去Cさんが原因で起きた数々のトラブルについて言及され、Cさんは役員としての適性を欠くとして役員候補者から除外するとした理事会の判断は、裁量の範囲内である、と判断され、Cさんの総会決議の無効の請求は棄却されました

KUWATA’S POINT!

立候補しているのに議案に載せないのは問題では?という疑問を持つ方も多いかもしれませんが、理事会の提出する議案では、理事会には、適性などを審査したうえで選別する裁量が認められているため、このような判決が下されました。

【CASE2】総会で役員の交代が決議されたのに旧役員が管理組合の資料の引き渡しに応じてくれません

相談者は管理組合の理事長に新しく就任したDさん。

定期総会で新しい役員が選任されたので、旧役員に対し、管理組合の預金通帳等の引き渡しを求めたところ、旧役員側が新役員を選任した総会の決議は不成立だから引き渡しには応じない、と断固拒否しているので、困っているという相談。そこで、通帳等の返還を求める裁判を起こすことに。

旧役員側は、総会において出席者である組合員の間で激しい口論が行われ、旧役員である当時の議長が散会を宣言したので、総会自体が不成立であると主張。

しかし、議長が散会と発言したあとも口論は続き、役員選任議案を含む複数の議案について多数決で承認されたあと、さらに混乱は収まらず議長が再度散会を宣言したという経緯から、役員選任議案の多数決が行われ賛成多数となったあとの散会の宣言は決議の成立を覆すことはできないとして役員選任議案の存在が認められ、預金通帳等を引き渡す請求を認容する判決が出されました。

KUWATA’S POINT!

議長が総会の進行を打ち切る前に、決議が成立していたことがポイント。審議中に散会するよう発言しましたが、議長は審議が混乱する中でも決議を取っていたので、いったん可決された決議を覆すことは不適当という判断がされました。

【裁判ではこんな判例も!】増築によって生じる日照阻害などについて争われた判例

マンションの増築に関する議案が可決され、増築工事が行われた。しかし、区分所有者のF氏が、共用部分の変更が一部の組合員の専有部分の使用に「特別な影響」を及ぼすときは、その所有者の承諾を得なければならず、本件決議に基づく増築は、F氏の専有部分の使用に「特別の影響」を及ぼすから、F氏の承諾が必要だが承諾していないので決議は無効として提訴した。

F氏の専有部分のうち、工事が行われた部分の北側に位置する居室の日照等が影響を受けたことはうかがわれるものの、居住環境を著しく悪化させたとまで認めるに足りる証拠はない。また、他の区分所有者の専有部分では、増築部分の北側の居室の採光、日照が若干の影響を受けるにとどまり、居室としての使用に大きな障害を生じていないことが認められ、F氏の専有部分についても、同程度にとどまるものと推認されるので「特別な影響」を及ぼすものではなく、決議は有効とした。

ここに注目!

「特別な影響」にあたるかどうかの判断がこの裁判のポイント。
増築による日照や採光、眺望などが影響を受けたことは認めつつ、居室の使用に大きな障害は起こっておらず、受忍の限度内であるという判断がされた。


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