理想の住空間を手に入れるためには、ライフスタイルに合った収納計画が欠かせません。リノベで人気の収納スペースやトレンドなどについて、リノベーション会社EcoDecoのコーディネーター兼設計で一級建築士の岡野真弥さんにお話をお伺いしました。
「リライフプラス vol.48」掲載
text:asami shimamura
illustration:akiko utsuro
教えてくれた人 EcoDeco(エコデコ) 岡野真弥さん
リノベーション会社EcoDecoのコーディネーター兼設計士として、数多くの事例を手掛ける。一級建築士、宅地建物取引士の資格を持ち、2019年には住み慣れた自宅マンションを自ら設計してリノベーションした。同社のセミナーや、動画セミナーの講師も務めている。
ロボット掃除機のスペース確保はマストに
リノベーションをきっかけに、ロボット掃除機を導入するケースが多いといいます。
「まずはロボット掃除機の基地となるスペースの確保と、スムーズに動けるように段差や障害物をなくすといった配慮が必要になってきます。下の写真のように、リビングの一角や納戸などに基地を設置することが比較的多いです。また、それ以外の掃除道具をどこにしまうかについても考えておく必要があります」と岡野さん。
「コロナの影響もあり、セカンド冷蔵庫や冷凍庫を置きたいという方も増えました。セカンドとはいえ、大きさはまあまああるので、その置き場もあらかじめしっかり確保する必要があります」
テレビの薄型化とサブスクの普及でリビング収納が変化
テレビの薄型化に伴い、リビング収納にも変化が起きているといいます。
「テレビボードは置かずに、壁掛けにするのが主流になってきています」と岡野さん。
「弊社の事例では、全体の8~9割がテレビは壁掛け、もしくはプロジェクターを採用しています。また、動画や音楽のサブスクリプションサービスの普及によって、DVDやCDなどのメディアを所有する必要がなくなり、テレビ番組を録画する機会も減ったため、レコーダーやDVDプレーヤーをお持ちの方は以前より少なく、テレビ周りの収納はだいぶ減ってスッキリした印象です」
「奥行き」をイメージすることでスペースを有効に
収納は「量さえ入ればいい」というわけではなく、スムーズな動線や家事の効率化のために「適材適所」であることが大事。
「打ち合わせでは、プランニングした間取りを提示後、どこに何をしまうか、どう暮らしたいかをイメージしていただきながら、収納場所を移動したり、棚を追加したり、と間取りを微調整していきます。意外に見落としがちなのが奥行き。例えばクローゼットなら60㎝は必要ですが、本の収納なら25㎝程度で十分。収納の位置や量だけでなく、奥行きもイメージしながら調整すると、限られたスペースを有効に使えます」
「収納計画」は施主にとって意外と盲点!?
「リビングを広くしたい、子ども部屋をここに配置したいといった、間取りについての希望が先立ち、収納計画まで具体的に考えていらっしゃる方は意外と少ない印象です」と岡野さん。
「『何をどこに収納しますか?』という質問をすると、ハッとする方もいます。すべての持ち物の量を正確に把握するのは難しいですが、例えば洋服ならクローゼットのハンガーバーの長さが合計何m必要か、といったことをイメージしてもらうようにしています。そうした打ち合わせを重ねて、過不足ない収納量を確保していきます」
ウォークスルークローゼット
WTC
出入り口が1か所のWICに対して、WTCは通り抜けができるクローゼットのこと。
サニタリーとキッチン、玄関とリビングなど、2つのスペースをつなぐ通路としての役目を果たし、洋服以外のものの収納場所としても活躍するため、家事動線の効率化を重視する方に人気です。出入り口が2か所あるため、どこからでもアクセスしやすいのはメリットですが、突き当たりに壁があるWICに比べて壁一枚分の収納が減ってしまうというデメリットも。
photo:EcoDeco
ウォークインクローゼット
WIC
WICとは歩いて中に入ることができるクローゼットのこと。WICには、大きく分けて個室に配置するパターンと、1か所に広めのWICをつくってファミリークローゼットとして使う2パターンがあります。
クローゼット内に人が入れる、収納量が多いというメリットがある一方、収納面積に加えて足を踏み入れる床面積も必要なので、その分スペースが取られるというデメリットもあります。
photo:EcoDeco
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ファミリークローゼット
個室内ではなく、廊下沿いなど家族全員がアクセスできる場所に設置し、家族全員の洋服をまとめて収納できるのがファミリークローゼット。収納を1か所にまとめたい、家族の洗濯物を一気に片付けて時短したいという方からのご希望が多いです。
ただしファミリークローゼットは「着替える場所」が盲点になりがち。着替えのスペースを設けるのか、各個室に洋服を持ち込んで着替えるのか、という行動パターンをシミュレーションしておく必要があります。
photo:EcoDeco
シューズインクローゼット
SIC
SICとは、靴を脱がずにそのまま入れる玄関収納。SICをつくる場合は、玄関横にある個室などのスペースをサイズダウンすることになりますが、その分、玄関の収納量はしっかり確保できるので、ゴルフバッグやキャンプ用品などをお持ちの方がよく採用されます。
生活感を隠したい方には扉付き、湿気をこもらせたくない方にはオープンタイプをおすすめしています。
photo:EcoDeco
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ファミリーライブラリー
子育て世代に人気の高いファミリーライブラリー。ある程度のスペースは必要になりますが、大人の本も子どもの本も1か所にまとめて収納することで、家族のコミュニケーションが活発になるメリットも。
廊下の片側の壁を一面本棚にするという方法もあります。デジタル化の影響で紙の本を全然持っていない方もいますが、逆に大量の蔵書をお持ちの方もいて、本の所有量については二極化している印象です。
photo:koji yamada
パントリー
パントリーとは食品ストックやキッチン家電など、キッチン周りのものをしまうための小部屋または壁面収納のこと。キッチンをリビングの一部として見せたいけれど、生活感は隠したいという場合は、キッチン奥のリビングから見えにくい場所にパントリーをつくるのがおすすめです。
廊下沿いなどキッチンから離れたところに納戸も兼ねたパントリーを設けて、食材だけでなく日用品などのストック収納に使う間取りも便利です。
photo:EcoDeco
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壁面収納
壁に棚や有孔ボードなどを設置して収納として活用するほか、間取り変更によって生まれたくぼみを生かしてニッチをつくることもあります。壁だけでなく、扉も壁の一部として有孔ボードで仕上げて収納にしたり、収納扉の取っ手代わりにタオルバーを付けてちょい掛けできる
ようにしたりするのも有効です。
棚などを造り付ける場合は、圧迫感が出ないようにバランスを考えてサイズや設置場所を決める必要があります。
photo:EcoDeco
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玄関土間
玄関土間とは床板を敷かずに土足で出入りできる室内スペース。以前は希望する方が多くいましたが、最近は落ち着いた印象です。隣接する個室の面積はどうしても狭くなりがちですが、収納量を確保できるのはメリット。
自転車やウェットスーツ、アウトドアグッズなど趣味のアイテムをディスプレイするように収納して、ガレージのようなスペースにするケースもあります。
photo:ayako mizutani
小上がり
小上がりは、マンションリノベではよく使われる手法のひとつ。ベンチやベッドなどの家具として製作するパターンと、リビングなどのスペースの一角に造り付けるパターンがあります。
造り付けの場合は、広いリビングにメリハリをつけるためにセカンドリビングのようにしつらえたり、逆に狭いリビングを立体的に活用して使えるスペースを増やす、という方法も。
内部を収納にすれば季節家電や布団などのかさばる荷物の収納場所として活躍しますが、奥のほうはどうしてもものの出し入れがしにくくなるので、使用頻度の高いものの収納にはあまり向きません。
photo: EcoDeco
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