知識ゼロからの断熱リノベQ&A(基礎知識編)

リノベーション・ゼミナール

せっかくリノベーションをするなら、間取り変更などと一緒に、一年を通して快適に過ごせる住まいにしませんか?特に夏の暑さや冬の寒さを解消するには、断熱性能を高めることが必須。

断熱リノベに関する基礎的な知識から、性能を向上させるための工夫やポイントについて、性能向上リノベに定評のある工務店、参創ハウテックの尾﨑誠一さんにお話を伺いました。

※こちらの内容は、2025年1月時点の情報です

「リライフプラス vol.52」掲載

illustration:midori takahashi

text:hiromi sakamoto

教えてくれた人 参創ハウテック

取締役、営業開発部長

尾﨑誠一さん

快適・健康と省エネルギーの両立をテーマに、断熱・気密性能の向上とパッシブデザインの設計を得意とする参創ハウテックで、様々な住まいの設計に携わる。一級建築士をはじめ、1級造園施工管理技士、2級福祉住環境コーディネーターの資格を持つ

Q01 そもそもすまいの断熱性能とは?

A 建物の内側と外側の、熱の伝わりを抑える性能のこと

断熱性能は、熱の逃げやすさと日射熱の入りやすさで決まり、性能が高いほど屋内外の熱の伝わりを遮断します。建物で熱が流入・流出する箇所は、屋根、外壁、床、開口部(窓・玄関)などの外周で、なかでも熱の出入りが最も多いのが窓です。断熱するにあたっては、それらの箇所をいかに効率よく防ぐかが性能向上のカギとなります。

Q02 断熱性能を評価する基準とは?

UA値(*1)とηAC値(*2)で決まります

断熱性能の指標となるのが、UA値とηAC値です。UA値(ユーエー)は、外皮(屋根・天井や基礎・床、外壁、窓・玄関など)からの熱の通りやすさを示した数値。外皮平均熱貫流率ともいいます。数値が小さいほど断熱性能は高くなります。ηAC値(イータ・エー・シー)は、屋根・天井や外壁、窓などから入る日射熱の割合を平均した数値。冷房期の平均日射熱取得率ともいいます。数値が小さいほど遮熱性能は高くなります。

図作成/ wade 出典:国土交通省「住宅における外皮性能」

Q03 近年、断熱性能が注目されているのはなぜ?

夏の猛暑や断熱に関わる規制強化、補助金制度の充実が後押しに

近年の夏の猛暑により、断熱性能の大切さを痛感している人は多いのではないでしょうか。現在、国は2050年までにカーボンニュートラルの実現(*1)、脱炭素社会の実現のため、住まいの断熱性能の向上に向けて様々な施策を打ち出しています。

そのひとつが2025 年4月から開始予定の「省エネ基準適合義務化」です。これにより、建築確認申請をする建物は省エネ性能を審査されることになり、高い断熱性能が求められるようになります。これまでは、延床面積300㎡未満の建物は除外されていましたが、今後は省エネ性能の審査が必要になります。新築に限らず、増改築した部分も対象になるので気をつけてください(延床面積10㎡以下は適用除外)。同時に行われる予定なのが、「4号特例(*2)の見直し」です。

2025 年4月からは木造住宅であっても、構造の過半(半分以上)をリフォームする場合は、建築確認申請が必要になります。申請には構造・省エネ関連の資料提出が必要になり、そのぶんの期間やコストなどが、今後増えていくと予想されます。これらの規制強化に加え、近年の補助金制度の充実もあり、関心が高まっていると思われます。

(*1)カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量を、森林などによって吸収することで全体としてゼロにすること

(*2)4号特例とは、木造住宅等の小規模建築物において、建築士が設計を行う場合は、構造関係規定等の審査が省略される制度のこと

Q04 断熱性能を高めると、どんなメリットがあるの?

快適な住み心地に加えて、体や家計、地球にもやさしい

断熱性能の高い住まいにすると、夏は涼しく、冬は暖かな室温で過ごせます。部屋ごとの温度差が少なくなるので、風邪やヒートショックなどのリスクが抑えられ、結露やカビが発生しにくく、掃除の負担も軽減できます。また、冷暖房効率がよくなるので光熱費の削減につながり、省エネが図れることからカーボンニュートラルの実現に貢献できます。

Q05 気密性能はなぜ必要?

気密を高めることで断熱効果が上がるから

いくら断熱しても、建物に隙間があれば外の空気が入ってきてしまいます。それを防ぐためには、隙間ができやすい窓周りや外壁の継ぎ目などを専用シートで気密化する必要があります。

気密性能の評価は、建物に対する隙間の大きさを示すC値で表され、数値が小さいほど評価が高いことを示します。

図作成/ wade

Q06 断熱材ってどう選べばいい?

コスト、施工性なども含めて総合的に判断を

断熱材は、繊維系、天然素材系、発泡プラスチック系に大別されます。繊維系のグラスウールやロックウールは燃えにくく、内部に水が入らなければ劣化しにくいので長持ちします。

天然素材系の羊毛も劣化しにくいですが、高価格な断熱材です。断熱性能がより高いのは発泡プラスチック系。成形板や吹き込み材など様々な形状がありますが、なかでもフェノールフォームは耐久、耐火性が高いといわれています。

そもそも断熱に対する基本の考え方は、断熱性能と厚みの掛け算。断熱材を選ぶ際は、断熱性能に加えてコストや施工のしやすさ、耐火・耐久性能などを考慮しつつ、その家や地域に合ったものを選びましょう。

画像はイメージです

Q07 断熱等級とは何?

断熱性能を等級に分けて示した指標のこと。数字が大きいほど断熱性能が高い

断熱等級は法律で定められたもので、正式には断熱等性能等級といいます。等級1から7まであり、Q8で紹介する省エネ地域区分に応じてUA値とηAC値が決められています。数字が大きいほど断熱性能が高いことを意味し、省エネ基準適合義務化後に建築確認申請を行うものは、最低でも等級4を満たさなければなりません。

国土交通省「戸建て住宅のZEH水準を上回る等級の設定について」

Q08 省エネ地域区分って何?

寒冷な地域ほど、より厳しい基準が求められます

日本の国土を8つの地域に分け、それぞれの地域の気候条件に合わせて住宅の省エネ性能 の基準を定めたもの。寒冷な地域ほど、より厳しい基準が求められます。地域ごとに必要な断熱性能や窓の性能などが異なりますので、詳しくは国土交通省のウェブサイトなどを参照してみましょう。

地域の区分 https://house.lowenergy.jp/programより

Q09 断熱リノベで使える補助金について知りたい

「住宅省エネ2025キャンペーン」をはじめ国や地方自治体などによる様々な補助金制度があります

2025年度の国の補助金制度には、下の表にまとめた、3省連携による「住宅省エネ2025キャンペーン」な どがあります。地方自治体については、お住まいのエリアによって異なるので調べてみるといいでしょう。どの補助金制度を活用するにしても、期間や要件などが異なるので注意してください。

(*1)補助対象となる給湯機は、機器ごとにそれぞれの性能要件を満たしたものに限る ※2025年1月時点での情報です

環境省:先進的窓リノベ2025事業について

国土交通省:子育てグリーン住宅支援事業について

経済産業省:給湯省エネ2025事業について

経済産業省:賃貸集合給湯省エネ2025事業について

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