25/01/29 10:00 投稿
知識ゼロからの断熱リノベQ&A(戸建てリノベ編)
リノベーション・ゼミナール
せっかくリノベーションをするなら、間取り変更などと一緒に、一年を通して快適に過ごせる住まいにしませんか?特に夏の暑さや冬の寒さを解消するには、断熱性能を高めることが必須。
断熱リノベに関する基礎的な知識から、性能を向上させるための工夫やポイントについて、性能向上リノベに定評のある工務店、参創ハウテックの尾﨑誠一さんにお話を伺いました。
※こちらの内容は、2025年1月時点の情報です
「リライフプラス vol.52」掲載
illustration:midori takahashi
text:hiromi sakamoto
Q10 ZEH(ゼッチ)ってそもそも何?
省エネ・創エネができる高断熱・高気密住宅で、カーボンニュートラルにも貢献
ZEHとは、ネット・ゼロ・エネルギーハウスの略語です。家庭で消費するエネルギー量と家でつくるエネルギー量を差し引いて、ほぼゼロにすることを目指した高断熱・高気密住宅のことをいいます。
エネルギーをつくる太陽光発電や電気を制御するHEMS(ヘムス)、LED照明やエアコンなどの省エネ家電のほか、高効率化された給湯器などを住まいに取り入れます。蓄電池も備えれば、太陽光発電でつくられたエネルギーを貯めることができ、夜間や停電時などにも電気が使えて便利です。これらの機能・性能を備えることで、カーボンニュートラルの実現に貢献する住宅として注目を集めています。また、ZEHには満たすべき断熱レベルがあり、これをZEH水準といいます。今のところ、2030年以降の新築住宅はZEH水準が求められる予定で、断熱等級5にあたります。
さらに、2050年にはリノベにおいてもZEH水準が求められる見込みです。
Q11 外壁の断熱にはどんな方法があるの?
外断熱、内断熱のほかに付加断熱という方法も
外断熱は建物の外側を断熱材で包み込むように施工する方法。内断熱は建物の内側に断熱材を施す方法で、充填断熱工法ともいいます。付加断熱工法は、建物の外側と内側に断熱材をサンドイッチ状に施す方法。どの工法を選択するかは、リフォームの規模によって異なります。建物の内側だけをリフォームする場合は内断熱が一般的。骨組みだけ残すスケルトンリフォームの場合は、どの工法も可能ですが、寒冷地の場合や、さらなる性能向上を求める場合は、付加断熱を採用するといいでしょう。
Q12 床断熱と基礎断熱の違いは?
基礎断熱のほうが高い効果を期待できるが手間とコストもかかる
床の底冷えで寒い場合は、床断熱もしくは基礎断熱のいずれかを行うことが多いです。床断熱は、床の仕上げ材の下に断熱材を充填する方法。床下を外気が通り抜ける構造のため冷気が入り込みやすくなります。
基礎断熱は、床の下にある基礎に対して断熱材を施す方法。方法は2種類あり、基礎の内側を断熱するのが基礎内断熱、基礎の外周側を断熱するのが基礎外断熱です。なかでも基礎内断熱は、基礎のコンクリートが蓄熱体のような働きをする点や、白アリ被害を防ぐという点でもメリットがあります。
Q13 部分断熱改修とは?
よく使う部屋など、スペースを限定して断熱することです
部分断熱改修とは、1階だけ、LDKだけなど、使用頻度の高い空間のみを断熱することです。
イラスト/ wade
Q14 玄関の断熱性能を高めるには?
※写真はイメージです/ pitxa
ドアリモ 玄関ドア D50 / YKK AP
カバー工法のドア枠にアルミ樹脂複合構造を採用し、優れた断熱性能で寒冷地域での凍結リスクを低減。20デザイン、9カラーで、電気錠は顔認証キーなど多彩にある。51万1000円~(消費税、施工費等除く)
リシェント玄関ドア3 / LIXIL
極寒地域に適した高断熱仕様のほか、寒冷地域や比較的温暖な地域に適した断熱仕様、防火戸の断熱仕様がある。40デザイン、12カラー。カバー工法に対応。高断熱仕様の価格は52万2000円~(価格は目安)
ノバリス 玄関ドア/三協アルミ
カバー工法の玄関ドア。高断熱仕様は7デザイン、5カラーで、スマートフォンでの施解錠が可能。46万1300円~(消費税、施工費等除く)。 ほかにも断熱仕様があり、23デザイン、7カラーから選べる。
Q15 窓を断熱化する方法は?
リフォームの内容によって4種類の方法から選択します
窓を断熱化するには、外窓交換(カバー工法、はつり工法)、内窓設置、ガラス交換の4つの方法があります。
「カバー工法」とは、既存の枠を残して古い窓から新しい窓に交換する方法。「はつり工法」は、既存の枠や窓をすべて取り外し、枠から新しくつくり直す方法。「ガラス交換」は、文字どおりガラスのみを新しいものに取り替える方法。「内窓設置」は、既存の窓の室内側に新しい窓を取り付けて二重窓にする方法です。窓を断熱化する際には雨漏りへの配慮が必須なので、外壁の屋外側をリフォームしない場合は、カバー工法や内窓設置がおすすめ。ガラスは、断熱性能、遮熱性能を高めるために特殊な金属膜「Low-E 膜」をコーティングした高断熱仕様のものを選ぶとより効果的です。
また、複層ガラスやトリプルガラスの場合、ガラスとガラスの間の中空層には、乾燥させた空気や熱を伝えにくいアルゴンガスなどが封入され、中空層の厚みがあるほど断熱性能は高くなります。さらに、空気よりもアルゴンガスのほうが熱は伝わりにくく、高断熱化につながります。
ガラス交換
既存のサッシはそのまま利用し、ガラスのみを取り替える工事。先進的窓リノベ事業の対象は、複層ガラス等への交換のため、単板ガラスから複層ガラス等に替える際は、厚みの違いをアタッチメントで調整します。既存のサッシがアルミでも、ガラスの交換で断熱性能は上がります
外窓交換(カバー工法)
既存の枠は残した状態で既存の窓を取り外し、既存の枠の上から新たな枠をかぶせて新規の窓に交換する工事。そのため、開口部は一回り小さくなりますが、部屋や外壁、既存の枠も傷つけることなく窓の交換ができます。先進的窓リノベ事業の対象は、複層ガラス等への交換となります
内窓設置
既存の窓はそのまま利用し、室内側に新しい窓を取り付け、窓を二重にする工事。先進的窓リノベ事業の対象には、既存の内窓を新しい内窓に交換する場合も含まれます。内窓の新設・交換のいずれも、内窓に使われるガラスは複層ガラス等が対象となります
Q16 予算が少ない場合はどうすればいい?
ケーススタディ戸建編 断熱リノベの補助金実際どれくらい利用できる?
先進的窓リノベ事業(環境省)
高断熱性能の窓に改修した際に補助が受けら れる事業。内窓の補助額はグレード(熱貫流率によりP(SS)、S、A、Bの4つに分かれる)と面積で異なり、Aさんの場合は、Sグレードの大(2.8㎡~)が1か所で8万4000円、Sグレードの中(1.6~2.8㎡)が5か所で計28万5000円、Sグレードの小(1.6㎡未満)が7か所で、計25万2000円の補助額となりました。すべてSグレードにしたことで、断熱性能を表す熱貫流率はUw1.5 以下を実現させています。※熱貫流率は数字が小さいほど熱が伝わりにくいことを表します
こどもエコすまい支援事業(国土交通省)
省エネリフォームなどを支援する事業。対象の工事などは8 種類あり、それぞれで要件や補助額が決められています。AさんはZEH水準の玄関ドアへの交換で4万5000円、屋根・天井の断熱工事によるZEH水準への改修で2万7000円の補助が受けられました。ほかにも、エコ住宅設備や子育て対応改修として、節湯水栓2か所で1万円、高断熱浴槽で2万7000円、掃除しやすいレンジフード1万1000円。空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置として、冷房能力の異なるエアコン計5台で10万4000円の補助を受けられました。
省エネ改修促進事業(東京都)
都内の既存住宅に高断熱窓、高断熱ドア、断熱材を施工する人に対して、経費の一部を助成する事業。助成額はそれぞれで要件が定められています。Aさんの場合、内窓は助成対象経費127万5100円のうち42万5000円が助成され、すべてSグレードを採用したので熱貫流率はUw1.5 以下を実現。また、玄関ドアの交換は、助成対象経費74万4000円のうち上限の16万円が助成となりました。これにより、熱貫流率が 3.49 W/(㎡・K)以下を実現しています。
専任のアドバイザーに相談してみよう
あなたに最適なリノベ会社を無料でご紹介いたします。