20/12/20 12:00 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(騒音編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス Vol.37」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
深夜に繰り広げられる上の階の方の騒音…。それが原因で不眠症気味です。
上階の住人Bさんは、夜中の1時、2時に毎晩家具(椅子などの小さな家具)をバタンバタンと倒しているような音を立てていました。私は0時には就寝しておりましたが、その騒音で起こされてしまい、不眠症のような状態が続く日々。あまりの辛さに、Bさんの郵便受けに「少し静かにしてもらえないか」という内容の手紙を投函したのですが、なんの反応もなく、騒音もやみません。私のマンションは分譲マンションで、私は購入して住んでいるのですが、Bさんは賃貸だということが判明したので、管理人さんにことの顛末をお話し、不動産会社を通して話し合いに応じてもらえないか相談したところ「帰宅するのが夜の12時くらいだから、そのあとなら話し合いができる」との回答。
さすがにそんな深夜は無理だとお伝えしても、Bさんの意見は変わりません。結局、不動産会社に再度騒音を立てないよう、ご注意いただくにとどまりました。2年間の賃貸契約更新の際にBさんは出て行かれたのですが、騒音が原因で体調を崩した時期もあり、何かできることはなかったのかと悔しい思いでいっぱいです。もしよい対処法があったのならぜひ知りたいです。
(東京都・Aさん・60代女性)
私の実感では、騒音トラブルの8割くらいは上下階の住人間で起こっています。
まず、分譲マンションの場合は、管理組合に相談して、掲示板などに「騒音についての苦情があがっているので、特に深夜の音の発生については十分注意してください」といった張り紙を掲示してもらいましょう。音を出している本人は自分のことだと自覚しなかったとしても、そんな問題が起こっているんだ、という意識付けにはなり、問題が解決することもあります。
個々人の話というよりはマンション全体の話にしてしまうことで、より穏便に騒音問題を解決に導くことができます。なお、賃貸マンションの場合は管理会社に相談しましょう。それでも騒音が止まない場合、次のステップとしては、弁護士に相談し、弁護士名で騒音を立てないようにという内容の通知書を出すという選択肢があります。
私の経験上、この段階で騒音トラブルが収まることも多いので、ある程度の効果は見込めます。通知書作成だけの依頼であれば、費用は5~10万円程度で済むことも。とにかく、個人間で解決しようとせず、まずは管理組合や管理会社に間に入ってもらい、注意してもらうことから始めましょう。
実際の事例の一部を修正しています。
【CASE1】 ドラムやシンバルをたたくような音が深夜から朝まで続く…。相談者が取った行動とは?
上の階の住人Cさんが、ほぼ毎日夜10時から朝の8時まで、ドラムやシンバルをたたくような音、重いものを引きずっているような重低音を立てて困っているというご相談でした。まずは管理組合に相談しましょうとアドバイスをして、管理組合のほうからCさんに注意をしてもらいました。Cさんは音を出していることを認め、気をつけますと約束したにも関わらず、その後も騒音が止むことはなかったそう。そこで、音の証拠を記録するために、騒音計を購入するかレンタルすることを提案しました。相談者は音が発生した際に、騒音計によって長期間にわたり記録。
その音の大きさは50デシベル前後と受忍限度(社会生活を営むうえで、我慢するべき限度)を超えていると考えられました。そこで「もし騒音の発生を中止しない場合には直ちに法的処置にうつり、損害賠償も辞さない」という内容の通知書を送ったところ、やっと騒音は収まり解決に至りました。
この相談者の場合は、騒音計で騒音を記録し続けることで客観的なデータを残してあったことが大きかったですね。とても地道で大変な作業ではありますが、騒音問題はこのように音量を可視化することがとても重要になります。
【CASE2】 下階の住人から「うるさい!」との苦情が。モップの柄で天井を突かれる恐怖の日々…。
騒音トラブル相談の多くは音に悩まれている方からのものですが、まれに苦情を言われて困っているという逆パターンもあります。相談者は一人暮らしの会社員の男性。ある日、下の階の住人Dさんから「うるさいから静かにして!」との苦情が入りました。相談者は床にカーペットを敷いたり、掃除機も昼間の時間帯にかけるなどの工夫をしたにも関わらず、連日Dさんからの苦情は続き、モップかほうきなどの柄で下から天井をガンガン突いてきたと思われるような音など、苦情の度合はひどくなるばかり。なお、相談者の部屋は開閉時に音が出ないようゆっくり閉まる仕様のドアだったので、ドアの開閉音が騒音の原因でないことは確実でした。
そこで「音を立てていることはありませんし、対策も取っています。これ以上の苦情を言われるのであれば、どうぞ法的な処置を取ってください」という内容で通知書を逆に送りました。それ以降、苦情は寄せられなかったとのことです
カーペットを敷く、音の出る家電を使うのは昼間の時間帯にする、など真摯な対策を取っていたことがカギでした。音のとらえ方は人それぞれで、中には過敏に反応される人もいるので、しっかり対策してるという行動を示しましょう。
【過去の判例】
上階の子どもが立てる騒音。勝訴の要因は具体的な証拠集めにあった!
被告は平成16年4月頃から、原告の上の部屋を借りて、妻、長男(当時3~4歳)と居住。原告は、被告の長男が廊下を走ったり飛び跳ねたりする音が受忍限度を超えていると主張し、訴訟を起こした。被告宅から発生した音は、ほぼ毎日原告の住戸に及んでおり、騒音計で音量を測定したところ、かなり大きく聞こえるレベルである50~65デシベルのものが多く、原告はこの音によって精神的な苦痛、妻にも食思不振、不眠等の症状が生じた。
被告は、細心の注意を払うとともに、床にマットやカーペットを敷くなどの対処をしていたと主張。被告は原告に対し、これ以上は静かにできない、文句があるなら建物に言うようにと述べた。
しかし、被告は効果の不明確なカーペットを敷くという方法を取っただけで、注意された際に取り合わない等その対応はきわめて不誠実なものだった。平成19年10月に、原告に対して慰謝料30万円、弁護士費用として6万円を支払うよう判決が下りた。
騒音裁判の場合、その証拠をどう集めるかという問題があります。 この判例では騒音計での測定記録や、騒音が原因での不調を証明する通院記録が証拠として提出されたようであり、勝訴になったものと考えられます。
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