コンパクトマンションをファミリーでも快適に住みこなす4つのキーワード

リノベーション・ゼミナール

「明確な定義はありませんが、コンパクトマンションとは専有面積30~50㎡程度、ファミリーで住むには少し狭い物件を指します」と話すのは、人気リノベーション会社「ブルースタジオ」クリエイティブディレクターの石井健さん。「テクニックを検討する前に、自分たちはどう暮らしたいのか、しっかりと家族間で話し合っておくことが大切です」。

また近年は多少コンパクトでも、住環境の現状維持を優先して持ち家をリノベーションしたい、という依頼が増えているそう。「部分リノベのオーダーも多いです。暮らしにフィットする収納を造作するだけでも、劇的に暮らしやすくなります。物件価格も工事費も上昇しているので、そうした選択肢は大いにありだと思います」。物件探しの際に注意すべきポイントについては「窓の位置や数、部屋の形などはよく確認を。面積が狭いほど融通が利かなくなるので、リノベ後の暮らしをイメージしながら探しましょう」。

限られたスペースで快適に暮らすためにはどうすればいいのか、4つのキーワードに沿って教えていただきました。

「リライフプラス vol.45」掲載

text:kimiko kimijima(FUSOSHA)

1 タテの空間を活用する

● 68㎡ 4人家族+猫

限られた床面積で居場所を増やすのに有効なのは、タテの空間を活用すること。 「こちらはお子さんの部屋をつくることを目的に2回目のリノベーションをしたお宅。リビングの向かいにあった寝室を再構築し、長男の個室と窓際のワークスペースを造作家具で仕切りました」(石井さん、以下同)。
造作家具は、階段も兼ねた本棚で上り下りできるユニークなつくり。上部は遊び場に、内部にはワークスペース側から使えるようにベッドを収めています。ワークスペースはいずれ長女の個室にする予定。「子ども部屋の壁は160cmと低めに設定して、圧迫感が出ないよう配慮しています」

リノベ後はリビングの小上がりを夫婦の寝室とし、天井近くに布団収納も新設した

ほどよいこもり感があって長男もお気に入り

photo: bluestudio

2 時間帯によって場を使い分ける

● 50㎡ 3人家族

シーンや時間帯によってフレキシブルに使えるスペースを設けるのも有効な方法。

「こちらのお宅の和室は、日中は長女が友達と遊んだり応接間的なスペースとして、夜は夫婦の寝室として、と何通りにも使えます。小上がりをベンチ代わりにして縁側のようにも使っているそうです」。

床下は収納として活用し、押し入れも設けてたっぷりの収納量を確保。
さらに「障子の開け閉めでプライバシーをコントロールできますし、冷暖房効率も高められます。こうした障子や引き戸は、普段は開け放しておいて、必要なときだけ閉められるので、空間の自由度が高くなります」

障子を閉めると個室のように使える

障子を開ければ土間と一体化して広々とした空間に。玄関から続く土間には自転車置き場も。メンテナンスの際、腰掛けるのにも便利

photo: ayako mizutani

3 ドンピシャな収納をつくる

● 60㎡ 3人家族

「長女の成長に伴い、住み替えかリノベかで迷った末、住み慣れた環境を重視してリノベすることにしたお宅です。廊下をなくし、壁面収納でLDKと個室を仕切りました」。

夫が長年コレクションしてきた、200個以上あるミニカーの収納も課題のひとつでした。

「コレクションケースごと壁面収納に組み込んで、前に引き出して使えるようにしました。最近はこちらのお宅のように、学区を変えたくない、住み慣れた環境を手放したくないなどの理由で持ち家をリノベする方が増えています。オーダーメイドで自分たちにぴったりの収納をつくることで、スペースを有効に使えるようになりますし、生活の質もアップします。少し費用はかかりますが、満足度はかなり高いと思います」

部屋の真ん中に壁面収納を設けて間仕切りに

夫が大切にしているミニカー

どこに何を入れるかを細かく決めて設計した

photo: koji yamada

4 床を何通りにも使う

● 50㎡ 3人家族

「例えば、ソファとテレビの間のスペースって、ほかに使用目的がない。すごくもったいないですよね。そうした家の中の無駄なスペースをなくして、床を何通りにも使えるようにすることで、面積以上の広さを感じられます」。

その代表的なものが壁付けのキッチンや通路に設けた洗面。「近年は感染症対策という点からも、通路に洗面を設けるプランの人気が高まっています」。

写真のお宅はキッチンを壁付けにしたことで、LDKの一角に長女の勉強机を置くスペースも確保できた。右手のブルーの壁を挟んで、2.4畳の子ども部屋を配置。造作の2段ベッドで空間を有効に活用している。

洗面を廊下に出すことで、脱衣室をゆったりさせられるというメリットも。

photo: ayako mizutani

ブルースタジオ クリエイティブディレクター 石井健さん

自分たちがどう暮らしたいのか家族でしっかりと話し合いを。狭いほど融通が利かないので窓の位置や数、部屋の形などを考慮した物件選びも重要。
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