21/06/16 10:01 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(管理費・修繕積立金の滞納編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス Vol.40」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki
design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
購入を検討中の物件の売主に管理費・修繕積立金の滞納が!どう対処するべき!?
昨年結婚し、それを機にマンションを購入しようと夫婦揃って毎週末物件探しに奔走する日々。新築マンションを買えるだけの予算がなかったため、中古物件に絞って探していました。
夫婦2人の通勤に便利な場所をと思い、エリアをかなり限定して探していたことや予算的な問題など条件が厳しかったこともあり、なかなかこれだと思える物件に出会うことができず時間だけが過ぎ…。
もう無理かもと諦めかけていたところ、やっと希望する条件に合致する1件の中古物件に出会うことができ、夫婦ともに大喜び。すぐに不動産会社に連絡を取り、内見することにしました。
実際に物件を見た結果、夫婦ともに気に入ったので、不動産会社に購入希望の話をしたところ、この物件の売主が3年間も管理費と修繕積立金を滞納していたことが判明。
この物件を購入する場合、私たち夫婦はどう対処すればいいのでしょうか?売主が滞納した管理費等を買主の私たちが払う責任を負わないといけないのでしょうか?
とても苦労してやっと見つけた物件ですし、今後もほかにいい物件が出てくるかどうか分からないので、できれば購入したいと思っているのですが…。
(埼玉県・Aさん・30代女性)
管理費の滞納問題は残念ながらよくある話です。
今回のように、売買の時点で滞納が解消されていない場合、Aさんが取るべき行動としては、まず滞納した管理費等を管理組合に送金して滞納を解消したら買いますよ、と売主に不動産会社を通して伝えてもらうこと。
また、売主に資力がない場合は、決済時に売買代金の中から滞納した管理費等に相当する額を管理組合口座に送金して清算する処理をするよう売主に提案を。
管理組合は、区分所有法第8条により、滞納している人の物件を購入した人にも滞納した管理費等を請求することができます。
例えばエレベーターの点検など定期的なものを含め、管理費や修繕積立金は日々使われていますよね。管理組合としては、売主であろうと購入者であろうと、どちらかにその滞納した管理費等を請求できないと、マンション(財産)としての保持ができなくなるため、このように定められているのです。
そのため、清算処理をしないまま購入した場合、Aさんは管理組合から滞納した管理費等の請求を受けることになってしまいます。ただ、そのあと居心地よく暮らせるとは思えないので、よくよく検討されることをおすすめします。
実際の事例の一部を修正しています。
【CASE1】住宅店舗複合型のマンション。共用部分の管理費用を店舗側も支払って!
相談者Bさんは、住宅店舗複合用途型マンションの管理組合の理事長。このマンションでは、事実上、住宅側と店舗側がそれぞれ自分たちの利用する共用部分を別々に維持管理していて、マンション全体に関係する工事などでは、そのつど費用の一部を店舗側が管理組合に支払っていました。
しかし、専有部分の面積からいって、店舗側の支払い額が少ないのでその差額を請求したいという相談でした。ただ、住宅と店舗に共通する管理規約が存在しなかったため、管理規約に基づく管理費、修繕積立金を請求することはできません。
そこで、管理規約に定めがない場合は持分に応じてかかった費用(管理費用、修繕費用)を負担することを定めた区分所有法第19条に基づき、過去に拠出した費用のうち店舗部分の不払い分を請求することにしました。
裁判にもつれ込んだ結果、管理費用、修繕費用など過去10年分についての支払いが店舗側に命じられました。
店舗、住宅を含めた管理規約がなく、区分所有者全体での総会で管理費等を決めていたわけでもないので、定額の管理費・修繕積立金は請求できず実際に発生した管理費用、修繕費用のうち店舗の負担分を請求した点に特徴がありました。
【CASE2】滞納した時期があったかもしれないが、その請求額には納得できない!
10年以上にわたる滞納管理費等の請求を求められたCさんからの相談でした。このマンションは一時自主管理物件となっていて、管理費・修繕積立金の支払いが行われておらず、その後管理会社が入りました。
Cさんが請求された金額は数十万円。Cさんはたしかに払っていなかった時期もあり、払った額もバラバラでした。
第1審では管理組合側の主張が認められ、控訴審へ。Cさんは、振込額はすべて振込月の管理費等として処理するよう指定をしていて、管理会社側も振り込みした月の管理費等として受け取ります、という内容の書面をCさんに渡していました。
このように管理費等の充当先が指定されていたので、「直近5年以内に振り込まれた分はその月の管理費等に充当されそれより前の滞納管理費等には充当されず、管理費等の消滅時効は5年なので、5年以上前の滞納管理費等が時効消滅した」と主張したところ、約3か月分の滞納管理費等の支払いで和解が成立しました。
ポイントは支払ったお金がいつの管理費等に充当されるのか、でした。直近5年以内に支払われた管理費等はその月の分に充当するよう指定していたので、それ以前の分は時効により消滅したと主張できたことが大きかったと感じています。
【裁判ではこんな判例も!】転売・譲渡された住戸の中間取得者は補修工事の負担金を払う責任を負う?
分譲マンションの共用部分の補修工事について、各組合員の負担額が約50万円、支払期日は平成7年4月と定められた。
当時、このマンションの506号室の所有者はD氏だったが、その後の平成9年11月に競売よりE氏が取得。さらに平成10年8月にE氏はF氏に売却したが、中間取得者であるE氏にも工事負担額を請求できるかが争われた。
裁判所はおおむね、共用部分の修繕費は建物全体の資産価値を維持し、また資産価値の下落を防止するための支出であること。現在区分所有権を持たないE氏にもその所有していた期間、管理組合による修繕費の支出による利益を享受していたし、また売却の際にも売買代金に反映されたと見ることもできること。中間取得者が責任を負わないと中間取得者だけ工事費用を負担しない不当な利益を得ることになり、適正な維持管理のために必要な請求権を強く保護する区分所有法第8条の趣旨に反することなどを理由にE氏の負担金支払義務を認めた。
区分所有法第8条に記されているように、本来の工事費を滞納していた債務者はもちろん、中間取得者や現在の所有者にも滞納費の支払い義務が生じることが明確になった判例。所有期間の長短は問題ではありません。
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