定期借地権付きマンションって何?|マンション購入にまつわる素朴な疑問VOL.3

リノベーション・ゼミナール

多くの人にとって、大きな買い物となるマンション購入は初めての経験で分からないことだらけ。そこで、
毎回キーワードをひとつピックアップし、知っておいたほうがいいこと、注意すべき点について分かりやすく解説します。

「リライフプラス vol.49」掲載

illustration:tatsuki oshimoto

edit:noriko sasaki

教えてくれた人 井出 武さん

学べるマンションメディア「マンション図書館」(https://mansionlibrary.jp/)の館長。1989年マンションの業界団体に入社。以後不動産市場の調査・分析、団体活動に従事。現在、東京カンテイ市場調査部上席主任研究員として、不動産マーケットの調査・研究、講演業務等を行う。

定期借地権付きマンションって何?

中古マンションを探していると、土地権利の欄に「定期借地権」と書かれたものを見たことはありませんか? 借地権とは、建物を建てるために土地を借りる権利のことで、「定期借地権」とは、借地期間に定めがある借地権のことです。つまり、定期借地権付きマンションとは、借地期間終了時に建物を解体して更地にしたあと、土地を返還する必要があるマンションのこと。

この「定期借地権」は1992年8月に借地借家法で制定された借地権のひとつ。借地期間は50年以上と定められています。法律が制定された頃は借地期間が50~60年のものが主流でしたが、最近では70年程度のものが増え、中には80年というものも。

「昨今、老朽マンションで管理費が足りないために値上げが行われたり、建て替えるか建て替えないかで意見がまとまらなかったりと、マンション管理と建て替えに関する問題が発生しています。そういう問題を心配せずに所有権から解放される手立てとして、今後『定期借地権』付きマンションが注目されるんじゃないかな、と思っています」(井出 武さん)。

もし「定期借地権」付きのマンションを購入する際は、どんなことに注意すればいいのでしょうか。そもそも「所有権」との違いは?など、「定期借地権」についての疑問や知っておきたいポイントなどを詳しく解説します。

所有権付き分譲マンションとの違い

実際には、「定期借地権」付きマンションの数は少なく、とんどが「所有権」付きマンションです。では、その大きな違いとはなんでしょうか?

「定期借地権」付きマンションの場合、マンションの所有者(区分所有者)は、建物の所有権を持ちますが、土地の所有権を持ちません。そのため、土地にかかる固定資産税や都市計画税を払うのは土地の権利を持っている地主となり、マンションの所有者は払う必要がありません。

また、借地期間終了時に建物を解体して更地にする必要があるため、購入した時点で、将来退去するリミットが決まっています。

一方、「所有権」付きマンションの場合、所有者は建物だけではなく、土地についても所有権を持ちます。そのため、土地にかかる固定資産税や都市計画税を払うのは土地の権利を持っている所有者となります。

ただし、「定期借地権」付きマンションと違い、「所有権」付きマンションの場合、建物を解体して更地にする時期が決められているわけではないので、所有している間はずっと住み続けることができます。

リライフプラス、マンション購入にまつわる素朴な疑問、所有権、定期借地権

三大都市圏に集中し、なかでも東京が最多の供給戸数

市場に出回っている数はそれほど多くない「定期借地権」付きマンションですが、2022年12月末現在、全国に657棟・3万3915戸あり、東北地方や九州地方の一部地域を除くと、35都道府県で供給されています。

なかでも供給戸数が多いのが、三大首都圏で、特に東京に集中しています。その理由は、土地価格。

そもそも、1992年8月に「定期借地権」に関連する借地借家法が制定された背景には、日本のバブル問題がありました。バブルで地価や住宅の価格が高くなりすぎて、購入することが困難な状況になる人が増えたため、土地の権利は地主のまま、建物の権利だけを持つ「定期借地権」が誕生。

そのため、日本でも特に地価の高い東京に「定期借地権」付きマンションが多く供給されているというわけです。

リライフプラス、マンション購入にまつわる素朴な疑問、都道府県別 定期借地権分譲マンションのストック数

出典:Kantei eye vol.116 Summer2023

定期借地権のほかに普通借地権も

マンションに付く借地権には、「定期借地権」のほかに「普通借地権」があります。その違いは、契約内容。「定期借地権」の存続期間は50年以上ですが、「普通借地権」の存続期間は30年以上。

また、「定期借地権」は定められた契約期間を過ぎた場合には、土地を返却する必要がありますが、「普通借地権」は契約を更新することができます。契約を更新することで、建物が存在している限りその土地を半永久的に借り続けることが可能です。

リライフプラス、マンション購入にまつわる素朴な疑問、定期借地権、普通借地権

出典:マンション図書館「普通借地権とは?定期借地権との違いやメリット・デメリットを解説」

定期借地権付きマンションのメリット&デメリット

メリット①

相場より安い

建物の所有権しかない「定期借地権」付きマンションは、建物にも土地にも所有権がある「所有権」付きマンションに比べて、安く購入できる傾向があります。

地域や建物のグレードなどにより異なりますが、「所有権」付きマンションよりも約20~30%も安い価格で購入できることも。

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ただ、最近の「定期借地権」付きマンションは、以前に比べて借地期間が長くなっていることもあり、新築の場合はそれほど大きな差がない物件も見受けられます。

また、昨今建築費が上がってきていることも影響していると思われます。

メリット②

「固定資産税」や「都市計画税」が不要

固定資産税や都市計画税は、不動産を所有している人が払う税金です。

建物、土地それぞれに課税されますが、建物の所有権しかない「定期借地権」付きマンションの場合、土地に関する固定資産税と都市計画税を払うのは地主。

建物部分の所有者(区分所有者)が納税するのは、建物分の固定資産税と都市計画税のみになるので、税金を抑えることができます。

メリット③

立地がいい場合が多い

「定期借地権」付きマンションは、土地の持ち主からすると、手放したくない土地に建てられるこ
とが多く、都心部や駅の近くなど利便性が高い立地にあるのが特徴。

ただ、これは最近見られる傾向で、90年代に建てられたものの中には、必ずしも立地がいいとはいえない物件もあります。

デメリット①

維持費がかかる

「所有権」付きマンションに比べて、固定資産税や都市計画税が抑えられるのが「定期借地権」付きマンションのメリットですが、その代わりに発生するのが、土地を借りている地主に払う地代です。

この地代はマンションによって様々で、契約内容によっては固定資産税や都市計画税より高くつくケースもあり、地価が上昇するとそれに合わせて値上がりすることもあるので要注意。かつ、「所有権」付きマンションでは発生しない、解体積立金という維持費がかかる場合も。

なお、管理費や修繕積立金は、「所有権」付きマンション同様に発生します。

デメリット②

最終的に土地を返却する必要あり

「定期借地権」付きマンションは、定められた借地期間終了時に建物を壊して更地にしたあと、土地を返還する必要があるため、期間以降は住み続けることができません。

長期的に見ると、来るべき時に備えて、次の住居を探して住み替えをする必要があります。何歳で購入するかにもよりますが、人によっては老後を過ごすことができなくなってしまうケースも。

また残存期間年数にもよりますが、子どもたちに相続した場合、売却が難しかったり、手続きが複雑になってしまう場合も。

デメリット③

売却価格が安くなる可能性がある

「定期借地権」付きマンションは、住み続けられる期間にリミットがあります。

例えば、借地期間が50年の物件の場合、築15年のときに売却すれば、次の買い手は35年住めますが、築40年のときに売却すると、次の買い手の人は10年しか住めません。

つまり、借地権の残り期間が短くなればなるほど、売却価格が安くなる傾向にあります。

定期借地権付きマンションを購入する際の注意点

注意点①

デメリットをしっかり理解したうえで購入を

「定期借地権」付きマンションには、メリットがある一方デメリットもあります。

固定資産税や都市計画税が抑えられる半面、地主に支払う地代や将来の解体費用を積み立てなければならないので、毎年かかってくるランニングコストをトータルで計算しておくことが大事。

また、住み続けられる期間に限りがあるので、自分の年齢と購入時期を鑑みて、老後まで住み続けるのか、住み替えるならいつにするのかなどの計画も必要になります。

購入当初から売却を考えているのなら、売却価格が購入価格よりも下がる可能性が高く、残りの借地期間によっては売れないケースがあることも念頭に置いておきましょう。

注意点②

住宅ローンを借りる際によくよく確認を

融資額が少なくなる可能性も

「定期借地権」付きマンションを購入する場合は、融資額が思ったより少なくなる可能性があります。

「定期借地権」付きのマンションは、「所有権」付きマンションよりも約20~30%安く購入できる傾向がある一方、物件の資産価値(担保価値)が低く評価されてしまう傾向も同時にあるからです。

長期間のローンが借りにくい場合もあり

仮に「定期借地権」付きマンションの残存期間が20年の物件を購入しようとした場合、その期間を超える長期間のローンを組むことは難しいといえます。融資額が少なくなる可能性も高いため、購入時にはそれなりの頭金を用意しておく必要が出てくるかもしれません。

どれくらいの融資を受けられるか、融資期間はどのぐらいか、を金融機関にしっかり確認しておきましょう。

こんな人が定期借地権付きマンションを購入するのに向いている!

●初期費用を抑えたい人

「定期借地権」付きマンションにはデメリットもありますが、メリットもあります。「所有権」付きマンションよりも価格を抑えながら、いい立地の物件に住むことができる可能性があるので、利便性が高い場所にとにかく初期費用を抑えて自分の家を手に入れたい、という人にはおすすめです。

●子どもへの相続を考えていない人

定められた借地期間終了時に建物を壊して更地にしたあと、土地を返還する必要がある「定期借地権」付きマンションは、「所有権」付きマンションと違い、子どもに資産として相続させることが難しくなります。逆に、子どもへの相続を考えていない人とっては、それがデメリットにならないので購入に向いている物件といえます。

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