《ようこそ!リノベの先輩(4)》リノベ後9年間マイナーチェンジを重ね続ける家

リノベーション体験談

「リノベーション体験談」の「《ようこそ!リノベの先輩(4)》リノベ後9年間マイナーチェンジを重ね続ける家」

中古×リノベした先輩のお宅を訪ねてリアルな声を聞く連載、今回はアンティークショップオーナーのKさんのお宅を約5年ぶりに再訪しました。

photo:koji yamada

text:eri matsukawa

工事費 150万円
東京都目黒区 K邸
夫48歳 妻50歳 長男15歳
築年数 34 年(昭和58年)
専有面積 65.57㎡

「暮らしの一部のように、次はどこを直そうかと考えます」

【9年前】築25年だったこのマンションを購入。既存のキッチンを撤去して、業務用の厨房機器を入れた。キッチンとダイニングの間にあった間仕切り壁も撤去し、床は白のモザイクタイル貼りに

【9年後】キッチンとダイニングの間にガラスブロックで壁をつくり、床には既存のタイルの上から墨入りモルタルを塗り重ねた。キッチン設備は元のまま

 ヴィンテージ家具や小物を扱うS.H.P.というショップ運営と、内装デザインの仕事をしているKさん夫妻は、年に2回ほど海外へ買い付けに行く生活だ。そんな職業柄、9年前マンションの購入時にリノベーションをして以来、ちょこちょこと自宅に手を入れ続けてきた。新品だったヘリンボーンのフローリングは生活の中でキズやシミが増え、ヴィンテージの家具が馴染んでいる。
 入居時には、キッチンとダイニングの間にあった壁を撤去。ダイニングと廊下の間のドアも外し、広々と暮らしていた。しかし、炒めものの匂いがリビングまで漂ってしまったり、冬は廊下から底冷えして寒かったり。そこで、3年ほどあとに改めてドアを取り付け、キッチンにも壁をつくった。壁のガラスブロックは「店舗の内装をしているときに見つけて、自宅にも使うことにしました」と妻。仕事で扱う商品で気に入ったものがあると自宅で使うという、なんともうらやましい環境だ。
最近になって、キッチンとトイレ、洗面室のタイル張りの床をモルタルに変える工事を行った。「白のモザイクタイルで目地も白だったので、たまった汚れが落としきれなくなり……。今回は目地のない墨色のモルタルにしました」。タイルをはがさず上から塗ることにして工期も工事費も最小限に。白いタイルの若々しいイメージから、しっとりと落ち着いた空間への変化は、9年という歳月を経て、Kさんの好みが大人のものに変わったことも反映している。Kさんが日本でいち早く取り入れた「インダストリアルテイスト」も、今や大人気。流行が追いついたかたちだが、「そうなると、また別のものが欲しくなるんですよね」と笑う。これからも、機会をとらえてはマイナーチェンジを重ねていくのだろう。

ガラスブロックは光を通しつつ料理の匂いをしっかりと遮蔽してくれる。キッチンのキャビネットは、量販店で購入した白い家具の上に、特注で製作したステンレスの天板を載せたもの

質実剛健な厨房機器は、今も変わらず健在。最初の工事でキッチンの壁をモルタル塗りにしたが、コンロ近くの油汚れが気になってきたので、新たにステンレス板を貼り増し。サッと拭けるから清潔さを保ちやすくなった

床の色とリンクさせた黒い傘の照明器具には使い込んだ味わいがある

以前から使っているスチールのワゴンは、イギリスの靴工場で使われていたトローリー。黒いドアは入居時にはなかったが、冷暖房の効率を考えて後から取り付けた

墨入りモルタルを塗ったキッチンの床。ここには地下倉庫への出入り口があり、その蓋にもモルタルを塗ったので重くなり、持ち上げるのが少したいへんになったとか

ダイニングのペンダントライトは付け替えた。ブラインドは、入居時はもっと長いものをカーテンボックスから吊り下げていたが、古くなり傷んできたので交換。「長くする必要はない」と、新しいものは窓枠のサイズに合わせた

テレビ台は7年ほど前に製作したもの。スチール部分に錆が浮いていい感じになってきた

ずっと付けたいと思っていたフランス製のブラケットライトを、最近になってやっと取り付けた

洗面台は入居時に付いていたものでずっとがまんしてきたが、今回念願かなって好みのものに付け替え、ユニットバスも交換した

トイレの床もキッチンと同じ白いタイルだったが、やはり目地が汚れてきたので、上から墨入りモルタルを塗った

個室のドアは無塗装のアンティーク品

レトロなガラスのドアノブはイギリスで買い付けたもの

入居時のリノベーションで撤去したダイニングのドアと、キッチンの仕切り壁は、暮らしてみてその必要性を感じ、復活させた形に。ただしキッチンの壁はダイニングとのつながりを遮らない程度に幅を小さく抑えている

KさんへのQ&A

Q1.やってよかった点は?
A.「キッチンとの間にガラスブロックで壁をつくってから、料理の匂いがリビングまで流れ出ることがなくなったので、よかったと思います。洗面台を好みのものに取り替えて、毎日気持ちよく使えるようになったのもうれしいです」

ペンダントライトを交換し、1人がけの椅子は撤去。写真では分かりにくいがソファにスチールの脚を製作して取り付け、補強するとともにモダンテイストを強くした。ラグは気分で替えている

Q2.今後の野望は?
A.1階住戸で広い庭があるので、コンサバトリーのようなものを増築して居住空間を庭へと広げてみたいなと思っています。サッシに内窓を付けて断熱性を高めたり、ウッドブラインドをやめて麻のカーテンを吊るすのもいいかな……。

Q3.前のリノベーションで失敗した点は?
A.広さを求め、キッチンとダイニングの間の壁を取り払ったことで、料理のときの匂いがリビングまで流れ出ていました。また、床のタイル目地を白にしたので汚れが染み付いて落ちなくなり、全体的に清潔感がなくなってしまいました。

リライフプラスvol.24掲載

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