仕切り方の工夫により広がりを持たせ 障子を用いて美しい表情の空間に
DATA
間取り図
「物件とリノベ費用を合わせて1500万」と予算を決め、事務所を兼ねる自邸の物件探しを開始した建築家の青木律典さん。探しながら気づいたのは、「団地はおトク」ということだった。「築年数が古いので敬遠されがちですが、そのぶん割安で、南向きだし緑も多い」と団地のメリットを挙げる。
購入したのは、南の窓から保育園の園庭が見える団地の2階。道を挟んで北側の2号棟は7階建てで大型なのに対し、前面道路で用途地域が変わるため、こちらの1号棟は3階建てで総戸数がわずか6戸とコンパクトな点も気に入った。
以前の住人は、昔ながらの3DKの団地の間取りを2LDKにリフォームした模様。LDKは広いが、間仕切りがないため玄関を入った瞬間にリビングまで丸見え。かえって狭さを強調してしまっていた。そこで青木さんは玄関から伸びる土間を設け、あえて間仕切りを設けて適度に隠すことで、奥行きを感じさせるプランを採用。
狭さも古さも感じさせない機能的で洗練された空間
間取りは大きく変えていないが、土間を進んで初めて奥が見えてくることで、空間がより広く、より豊かに感じられるようになった。土間の先に広がるDKは、この家のメインの場。南と西の窓には障子が設けられ、落ち着いた雰囲気を演出している。
「障子は光を拡散するので、1日を通して柔らかな光を楽しめます」と青木さん。南側の2つに分かれていた開口部は、障子で覆うことで1枚の大きな窓に見せているのもポイントだ。また、約57㎡とコンパクトながら、寝室のオープンなクロゼットやワークスペースの壁面収納など、随所に設けた収納のおかげで「ものが片付かないストレスがなくなりました。すっきり暮らせるって素敵だなと実感しています」と妻。半オープンのトイレもユニークで、昔ながらの団地がスマートに生まれ変わった。(写真:takuji iigai)
青木さんのワークスペース(事務所)は4畳半とコンパクトだが、入り口を入ったところにはお気に入りの写真やチェストなどを配してゆとりの空間を設けている
もとは2つの部屋を1室にしたため、2つに分かれていた南側の窓の内側に、大きな木の枠を設置。障子を設けて1枚の大きな窓に見せている
西側の窓にも障子を設置。中桟をできるだけ細く、少なくデザインしたことで、シンプルで洗練された印象に
ワークスペースから、土間とオープンな水回りを見たところ。左手に扉が3つあり、手前が洗濯機置き場、中央が衣類などの収納庫、奥が浴室
「広さが限られているので、トイレを“部屋”にしてしまうとスペースがもったいない」(青木さん)と、洗面とトイレを一体化。トイレを使わないときは、カウンターで洗濯物を畳んだりアイロンをかけたりもできる
壁面や机の下を利用して、大量の資料や雑誌を整然と収納したワークスペース。左手は既存の物入れの扉をなくし、白い布で隠して棚として活用。プリンタなどが置かれている
MATERIAL
玄関、土間
床:モルタル金ゴテ押さえ防塵塗装
壁、天井:塗装
LDK
床:ナラフローリング
壁、天井:漆喰
寝室、ワークスペース
床:パインフローリング
壁、天井:塗装
トイレ、洗面室
床:フレキシブルボードに撥水塗装
壁、天井:塗装
INSTRUMENTS
キッチン
オリジナル
コンロ:ハーマン
レンジフード:富士工業
水栓:グローエ
サニタリー
ユニットバス:TOTO(既存)
トイレ:INAX(LIXIL)
洗面ボウル:サンワカンパニー
水栓:ハンスグローエ