マンションの限られた空間でもここまでできる。暮らしに余白を生む、これからの間取り

リノベのトレンド

暮らしに余白があることは、心地よく暮らす上で大事なことのひとつと言えます。余白は空間のゆとりとしてはもちろん、家族との距離感、時間の使い方など、生活のさまざまなシーンで欲しいもの。では、マンションの限られたスペースでどうやったら余白のある暮らしが実現できるでしょうか?そのヒントはどうやら間取りにありそうです。 家に多様性が求められるこれからの時代、〇LDKという表記ではあらわすことのできない自由な発想の間取りが増えてきているように感じます。

今回の特集では、リノベりす編集部がピックアップした気になる間取りを、リノベのプロたちが解説。間取り図や画像だけでは読み取れない、家づくりの奥深さがありました。

いろんな居場所をつくることで空間の多様性を生む

木の箱で居場所が選べるワンルームリノベーション


ハコリノベ

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家の中央に木の箱に見立てた収納を置き、それを土間、LDK、インナーテラス、寝室でぐるりと囲ったこちらの事例。必要に応じてカーテンなどで間仕切ることができますが、空間としてはワンルームに。限られた空間と予算の中で「色々な居場所のある家にしたい」という施主の要望をどう叶えるか。それを考えた末に行きついたプランだとハコリノベのデザイナーである友重さんは言います。

「マンションも戸建て同様に、方角や立地によって、光の入り方や気温の感じ方など五感にかかわる室内環境が大きく異なります。それを逆手にとって、半屋外のような場所、ちょっと腰かける場所、広々と使える場所、狭くてこもれる場所など、マンションの中でも自然環境に似たいろんな居場所を整えることで、空間の多様性が生まれるのではないかと考えつきました。」

それぞれの部屋がつながる空間は行き止まりがなく、どこまでも伸びやか。シンプルに機能は振り分けられていますが、基本的には好きなときに、好きな場所でそれぞれの時間を楽しめる余白が生まれています。

ハコリノベ デザイナー 友重さん

■プランニングの際のこだわりや工夫、難しかった点について教えてください。

大きく分けると4つの余白空間(土間、リビング、インナーバルコニー、ベッドスペース)が緩やかにつながっていく間取りなので、素材感の統一や造作家具と木の箱との関係性やバランスを整えることに注意を払いました。


■こういった間取りをつくる際のメリットや注意点があれば教えてください。

既存の間取りや室内環境、水まわりの位置を注意深く読み解くことで、必ずしも大幅に間取りを変更しなくても、間取りをガラっと変えることができます。水まわりの移動がなければ、コストを抑えることも可能です。

玄関、LDK、バルコニーまでをひとつの空間としてとらえる

リビングを中庭に見立てて部屋を配置。戸建て感覚のマンションリノベ


SHUKEN Re(シュウケンアールイー)

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玄関を開けると、バルコニーまで視線が抜け、開放的な雰囲気のあるKさん宅。建築設計の仕事をしている夫がプランのベースを手掛けました。室内なのに屋外のような雰囲気のあるこのプランの起源は、夫が学生時代に訪れたイタリアの集落にあるといいます。外と中があいまいな建築物がとても印象に残ったそうで、「LDKは中庭のような立ち位置で、箱のような個室(=室内)からみんなの共有スペースであるLDK(=屋外)に出ていく」「箱の中に箱がある」というイメージのもと、それぞれの居室をレイアウトしていきました。

夫の頭の中にある詳細なイメージを、「マンション」という構造上の制約がある建物でどのように実現していくのかをSHUKEN Re(シュウケンアールイー)の重野さんがサポート。LDKから続く広々としたバルコニーまでをひとつの空間として捉え、外に向かって広がっていくような風通しのよい住まいとなりました。

SHUKEN Re(シュウケンアールイー)  プランナー 重野さん

■プランニングの際のこだわりや工夫、難しかった点について教えてください。

この物件の大きな特徴がバルコニーが非常に広いという点です。Kさんも内見の際に東と南に向いたバルコニーに惹かれて購入を決めたそうで、バルコニーとのつながりを意識して設計をされていました。もともとの窓が、マンションでは珍しくフルオープンにできる折り戸式だったので、玄関からバルコニーまでがひとつづきのような間取りをつくりあげました。

また、土間のモルタルをリビングまで延ばし、家の1/3を土間にしています。開放感を出すために、キッチンを大移動させたのですが、そのおさまりを考えたり、壁のシナ合板の割り付けを考えるのは少し難しかったです。


■こういった間取りをつくる際のメリットや注意点があれば教えてください。

バルコニーからの眺めがいい!より開放感をだしたい!という場合、今回のように視界を遮らないプランは、物件の魅力を最大限に引き出せると思います。家での過ごし方が多様化しているので、「空間を広く使い平米数以上の広さを感じられる」ということがメリットではないでしょうか。
注意ではないのですが、せっかくつくった「余白」もモノが溢れかえっていると良さが半減してしまうので、モノを減らす、しっかりと収納スペースを作るということも必要になるかと思います。

今回取り上げた3つの事例は、どこか戸建てのような雰囲気があると感じていたのですが、プランナーさんのお話をうかがうと、どの事例も「外」を意識してプランニングされていたのが納得でした。開口部の限られたマンションで「外」の雰囲気を取り込むことは、面積以上の広さを感じる大事なポイントになりそうです。

また、屋外と室内の中間となる土間を広くとることで、家の中でできる活動の幅が広がるというのも、暮らしに余白をもたせるという点でとても有効ですね。昔の家に必ず広い土間があり、そこで農具の手入れをしたり、人をもてなしたりしたように、現代でもそういった「どのようにでも使える」場所が求められているのではないでししょうか。

一見、奇をてらったような間取りに見えますが、実はとてもシンプルで昔ながらのプラン。空間をつなげながら必要に応じて間仕切る考えは、部屋を襖で仕切っていく和室の考えそのもの。暮らしに余白をもたらすヒントは、意外にも家の原点にあるのかもしれません。

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