25/02/05 10:00 投稿
知識ゼロからの断熱リノベQ&A(マンションリノベ編)
リノベーション・ゼミナール
せっかくリノベーションをするなら、間取り変更などと一緒に、一年を通して快適に過ごせる住まいにしませんか?特に夏の暑さや冬の寒さを解消するには、断熱性能を高めることが必須。
断熱リノベに関する基礎的な知識から、性能を向上させるための工夫やポイントについて、性能向上リノベに定評のある工務店、参創ハウテックの尾﨑誠一さんにお話を伺いました。
※こちらの内容は、2025年1月時点の情報です
「リライフプラス vol.52」掲載
illustration:midori takahashi
text:hiromi sakamoto
快適・健康と省エネルギーの両立をテーマに、断熱・気密性能の向上とパッシブデザインの設計を得意とする参創ハウテックで、様々な住まいの設計に携わる。一級建築士をはじめ、1級造園施工管理技士、2級福祉住環境コーディネーターの資格を持つ
Q17 そもそもマンションに断熱は必要?
住戸の位置や築年数によって断熱化が必要な場合も
上下左右を他の住戸で囲まれた中住戸は、屋外に接する部分が少なく、外気温の影響を受けにくい場合が多いです。一方、角部屋や最上階の住戸は屋外に接する部分が多く、外気温に影響されやすい環境にあります。同様に、下の階に屋外駐車場がある住戸や1階の住戸なども外気温に左右されやすくなります。
以前弊社が手掛けた事例の中に、上階のベランダが天井に載っている中層階の角部屋がありましたが、天井をはがしたところ断熱材が薄く、新たに断熱材を施したことがあります。また一般的に、住戸内の北向きの部屋は日が当たりにくく、使用頻度も少ないことから、室温の低い状態になることが多いです。そこにLDKの湿気を含んだ暖かい空気が流れ込むと、壁が湿って結露が発生し室内にカビが発生してしまうので、リノベのタイミングで対策をするといいでしょう。
イラスト/ wade
Q18 玄関ドアは共用部だから対策はできない?
玄関に室内ドアを取り付ける方法も
マンションの管理規約上、玄関ドアの交換や外側からの対策はできないケースが多いです。交換できない場合は、住戸内の廊下に室内ドアを取り付けて、玄関を個室化することもひとつの手です。室内ドアを取り付けることで、外から入ってくる冷たい空気が遮断され、リビングへの外気温による影響を軽減できます。ほかにも、玄関ドアの室内側に断熱シートを貼ったり、断熱カーテンを取り付けるといった方法もあります。
しかし、シートは見た目が半減し、カーテンは開け閉めのわずらわしさがあることを考えると、室内ドアを取り付けたほうが見た目がよく、移動しやすくて快適だと思います。いずれにしても、玄関や窓はマンションの大規模修繕のタイミングで改修が検討されるので、マンションを購入する際には、改修の履歴や予定などを確認するといいでしょう。
photo:susumu matsui
renovation:hiroyajima-design
Q19 窓の変更が有効って本当?
内窓の設置を検討してみましょう
窓は熱が逃げやすいので、窓の断熱化を検討しましょう。しかしながら、マンションによっては、管理規約でリフォームできる内容や範囲に制限があるので、まずは管理規約を確認してください。多くの場合、住戸内は比較的自由にリフォームできても住戸外は個別の工事ができません。
そのため、マンションにおける窓の断熱化はほとんどが内窓の設置になります。内窓の取り付けには、窓枠の奥行きが最低7㎝必要なので、満たない場合は事前に奥行きを広げる大工工事が必要になります。内窓は各社で様々なタイプの商品が出ています。「先進的窓リノベ2024事業」対象となるものもあるので、しっかり選んで採用しましょう。
おもなメーカーの内窓の種類と特徴
マドリモ 内窓 プラマードU / YKK AP
樹脂フレームの内窓。熱貫流率に優れた真空ガラスなどが選べる。フレームは、6カラー。引き違い窓の参考価格は16万8800円(W1501~2000×H1401~1800㎜、ガス入りLow-E 複層ガラス、ガラス入りアルミスペーサー。消費税等除く)
インプラス/ LIXIL
Low-E 複層ガラスのアルゴンガス入りなどが選べる内窓。デザインガラスが使えるforRenovationや浴室仕様などもある。引き違い窓の価格は13万3000円(W1650×H1800 ㎜、複層ガラス。消費税等除く)
プラメイクEⅡ/三協アルミ
後付け樹脂内窓。中空層に格子が入ったデザインのLow-E 複層ガラスや浴室タイプなどが選べる。サッシは5カラー。引き違い窓の価格は10万8200円(W1000~1500×H1501~1800㎜、複層ガラス。消費税等除く)
まどまど plus(プラス)/ AGCグラスプロダクツ
アルミと樹脂の複合断熱構造の内窓。断熱・遮熱・防音性能に優れたLow-E 複層ガラスや、断熱・遮熱・安全性能を持つアルゴンガス入りLow-E強化複層ガラスなど、ガラスメーカーならではの高性能ガラスが選べる。価格は要問い合わせ
Q20 間取りで工夫できることはある?
外に接する空間を緩衝帯として活用するプランなどがあります
例えば、日当たりのよいリビングなどは、ベランダ側を土間の床にして、既存の窓と挟むように室内窓を取り付け、縁側のような空間をつくるといいでしょう。既存の窓から入る太陽の熱を土間が蓄えられるので、冬の夜は室内窓を開ければ蓄熱された暖気がリビングに流れ込んで快適です。夏は土間スペースが緩衝帯の役割を果たしてくれます。
また、結露が起きやすい北側の個室は、玄関や屋外の共用廊下に接していることが多いので、共用廊下側に玄関土間を設けるのも有効。玄関土間に隣接するように個室を配置させれば、玄関土間が緩衝帯となって外からの熱の伝わりをやわらげてくれます。
▼リノベーション事例をみる
SHUKEN Re(シュウケンアールイー)
【ケーススタディ】マンション編 断熱リノベの補助金実際どれくらい利用できる?
Bさん 50代夫婦+子ども
マンションリノベの場合ももちろん補助金を利用できます。
Bさん家族の住まいは、築37年のマンションの角部屋。旧省エネ基準で建てられており、既存のままでは断熱等級2という状態。そこで、ライフスタイルに合わせた間取りに変更しつつ、断熱性能を向上させるリノベーションをすることに。7か所の窓に内窓を取り付け、外壁と床、天井に断熱材を施工しました。
結果、ZEH水準(断熱等級5)を優に超え、断熱等級6に手が届くほどの性能へと引き上げることに成功。また、こどもエコすまい支援事業を利用して食洗器や節湯水栓を採用するなど、省エネ化や家事ラクにも配慮。複数の補助金制度を併用することで、125万5000円分の補助金を受けることができました。

Bさん宅で活用した補助金の種類と内容
先進的窓リノベ事業(環境省)
内窓の補助額はグレード(熱貫流率によりP(SS)、S、A、Bの4つに分かれる)と面積で異なり、Bさん宅の場合は、Sグレードの大(2. 8㎡~)が4か所で計33万6000円、Sグレードの中(1.6 ~ 2.8㎡)が1か所で5万7000円、Sグレードの小(1.6㎡未満)が2か所で計7万2000円。すべてSグレードにしたことで、断熱性能を表す熱貫流率はUw1.5 以下を実現させています。

こどもエコすまい支援事業(国土交通省)
外壁と床の断熱工事で省エネ水準に改修したことで、外壁11万2000円、床6万9000円。また、エコ住宅設備や子育て対応改修として、節湯水栓2か所で1万円、ビルトイン自動調理対応コンロで1万4000円、ビルトイン食洗機で2万1000円。空気清浄機能・換気機能付きエアコンの設置として、冷房能力2. 2kW以下が1台、冷房能力3.6kW以上が2台で、計6万9000円。合計で29万5000円の補助が受けられました。
省エネ改修促進事業(東京都)
内窓は助成対象経費78万9740円のうち、経費の3分の1となる26万3000円の助成が受けられました。すべてSグレードを採用したので、熱貫流率はUw1.5 以下を実現しています。また断熱材は、助成対象経費70万8680円のうち、国の補助額との兼ね合いから助成額は23万2000円になりました。外壁や床の断熱改修によって、断熱性能は省エネ水準を満たしています。
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