18/08/26 10:00 投稿
オトナリノベの基礎知識1/3
リノベーション・ゼミナール
今の暮らしをもっとよくしたいと思っているあなた。 いまどきはリフォームをバージョンアップした リノベーションという方法があるのをご存知ですか。 「でも具体的にどこからどうしたらいいのかわからない」。当然です。 ここでは、リノベーションの基本的な知識をご紹介します。 今の家をどんな風に変身させられるのか 想像してみてください。
イラスト=大島健二 Kenji Oshima(OCM一級建築士事務所)
構成・文=大山直美 Naomi Oyamatext atsuko tanaka
こんなにある! いいこといろいろリノベーション
今の家をリノベーションする、あるいは中古物件を買ってリノベする。その最大のメリットは新築や建て替えより割安な点だろう。戸建ての場合、よほどひどく傷んでいない限り、元の骨組みを生かしたほうが安上がりだし、マンションも新築と中古では大きな価格差がある。特に戸建ては古くなると建物の値段はゼロに近づき、物件価格の大半は土地の値段。見方を変えれば、日本は世界でも珍しいほど、中古住宅がお買い得な国といえる。
住み替えを考える場合、年を重ねたら今よりもっと便利な場所に住みたいとか、いっそ都心のマンション暮らしを謳歌したいという人も少なくないが、新築だと手が届かない可能性が高い。その点、割安な中古+リノベなら憧れの街に住める可能性が広がる。また、戸建てもマンションも、先に建てたほうが立地がいい場所を押さえているのは当然。容積率などの法規制が緩い時期に建てられていて、空間に余裕があるヴィンテージ物件も多い。
ゼロからつくり上げる新築と異なり、リノベには必ず対照実験の比較対象ともいうべき、改修前の家がある。リノベに踏み切るからには、暗い、寒い、使い勝手が悪いなど、老朽化以外にも欠点があり、以前から住んでいた家だとなおさらその不満はたまっているはず。それが劇的に変化し、同じ家とは思えないほど快適になる――そのビフォーアフターの激変ぶりは、リノベの醍醐味といっても過言ではない。満足度は新築より高いのでは?
全面リノベといっても、総取っ替えするわけではない。むしろ生かせるものは生かす、長く住んできた家ならその記憶を残すのも、リノベだからできること。天井をはがしてみたら、築浅物件ではお目にかかれないような、どっしりした柱や梁が出てくる場合もある。さらに、戸建てでは庭、マンションでは共用部の緑が大きく育っていることもリノベならではの魅力。年月を経たがゆえの味わいや懐かしさのある家づくりを目指したい。
若い頃にはさほど気にならなかった段差や暑さ寒さも、年を重ねるほどに体に応えてくるもの。50代以上のゆとりある世代がリノベを行う場合、バリアフリーや断熱性の向上など、目に見えない快適性にお金をかける比率が高いという。また、長年住んできた家をリノベした人に話を聞くと、よく耳にするのが「やる気が出た」「エネルギーが湧いた」という言葉。環境が変わることで心身が健やかになれば長生きにつながるに違いない。
中古より新築のほうが資産価値が高いというのはご早計。新築は買った途端に中古になるため、年数が経つと価格が半減することも珍しくない。しかし、中古はさほど極端に値下がりしないし、リノベするとむしろ価値が上がるため、賃貸に出した場合も割高な家賃で貸せる。自分たちの終の住処として考えるだけではなく、いずれは子どもに相続することも想定し、将来売ったり貸したりしやすい資産として価値をキープしておきたい。
少子高齢化が進む中、今や日本全国の7軒に1軒が空き家といわれ、今後もその割合は増え続けると見られている。手を入れれば十分住まいとして使える建物がこんなにたくさんあるのに、これを使わないのはもったいない。また、古家を解体すると大量の廃材が生じ、新築時には木材をはじめ、大量の建材が必要になる。環境負荷を考えても、すでにある資源を有効に活用できるリノベのほうが、新築よりエコロジーであることはまちがいない。
リノベーションとリフォームの違い
リノベーションとリフォームには、実は厳密な線引きはない。英語のrenovationは建物の改修を指すが、reformは本来、法律や組織などの改良を指す。では日本では両者の違いはというと、リフォームは単に壁紙を替える、設備を交換するといった老朽化や不便さの改善にあるが、リノベは新築時に戻すことが目的ではない。暮らしを変え、自分らしいスタイルの家に変貌させる、それがリノベなのだ。
<別冊住まいの設計228 リライフプラス特別編集 オトナリノベーションNo.1掲載>