21/01/24 12:00 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(漏水編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス Vol.38」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
漏水でパソコンが故障。上階の人、管理組合、結局誰が弁償してくれるの!?
ある日、旅行から帰ってきてみると、天井から水が漏れていてリビングが水浸しに。置いてあったパソコンが壊れてしまい、アルバムの中の写真も濡れて張り付いてしまいました。急いで管理人さんに連絡したところ「漏水の場所から見て、おそらく上の階の住人Bさんがお風呂の水を流しっぱなしにしてあふれさせたのではないか。そういえば、Bさんは過去にも漏水させたことがあったし…」とのこと。
そこで、上の階の状況を確認したいと考え、管理人さんからBさんに連絡してもらいましたが、「お風呂はきちんと管理している。漏水など起こしていない!先日の台風で大雨が降っていたし、このマンションの管理組合は、長期修繕をろくに行っていないから、外壁から雨漏りしたのではないか」と取り合ってくれず、Bさん宅の室内を確認することも拒否されました。どうやら、過去の漏水事故のときにも、Bさんと管理組合や管理会社との間でトラブルがあり、お互い感情的になっているようです。私としては、Bさんでも管理組合でもよいのですが、漏水を修繕してもらいパソコンや写真の弁償をしてほしいのですが、どうすればよいでしょうか。
(神奈川県・Aさん・30代男性)
漏水トラブルを解決するための最初のポイントは、漏水の原因となっている箇所が共用部分か専有部分かを明らかにする、ということ。まずは管理組合に調査を依頼しましょう。管理組合は通常は損害保険に加入しており、調査費用も保険から支払われる例があります。その調査結果で上階の住人(専有部分)に原因があれば上階の住人に、外壁に原因があれば外壁を管理する管理組合に賠償請求をすることになります。
上階の住人が立ち入りを拒否しているとのことですが、マンションの管理規約には一般的に理事長などの立ち入りを認める条項があるので、立ち入らせてくださいというお願いはできます。 ただし、それでも拒否された場合には強引に立ち入ることはできず、承諾に代わる判決を求める裁判を起こして判決を得る必要があります。また壊れたパソコンに関しては、購入時の金額ではなく、経過年数による価値の減少と使用による消耗分を差し引いた時価賠償となることが原則ですが、保険の内容によっては再購入に必要な金額の賠償となることもあります。台なしになってしまった写真については、残念ですがよほどのことがない限り、高い金額の評価とはならないでしょう。
実際の事例の一部を修正しています。
【CASE1】天井&壁からの漏水を管理組合に相談したら責任逃れのような発言、態度をされて激怒!
購入したマンションの1室をリノベーションしようと、内装をはがしてコンクリート打ちっぱなしの状態にしたところ壁にひび割れを発見したCさん。その矢先にゲリラ豪雨が発生し、壁のひびから水が染み出したり、天井からも水が…。そこで管理会社に事の顛末を話したところ「それはうちの責任ではない」との返答。実はCさんが購入した物件は外壁部分にエアコンを埋め込んで設置するという非常に古く珍しい構造で、マンションの管理規約には、エアコンの設置は個人でやることと明記されていました。
前の居住者がエアコンを撤去したまま放置していたので、そこから雨水が染み込んできた、というのが管理会社の主張。しかし、そこ以外にも室内の窓の上下、天井の隅にひびが複数存在していて、漏水を発見。そのうえ外壁のモルタルの劣化も確認されたため、建物の管理を怠った管理会社に非があることが認められ50万円がCさんに支払われることになりました。
今回のケースの場合、相談者のCさんが漏水があったまさにそのときにしっかり証拠写真を撮っておいたことが一番の決め手になりました。また外壁のモルタルの劣化状況も写真に撮って提出できたのは大きな意味がありましたね。
【CASE2】 確かに漏水事故を起こしてしまったのは申し訳ないが、それにしても請求額高すぎない?
相談者のDさんは、浴槽にお湯をためたまま放置したため、下階のEさん夫妻の部屋に漏水被害を与えてしまいました。Eさん夫妻は新婚旅行の真っ最中だったこともあり、余計に気分を害してしまったそう。後日損害賠償をすることになったのですが、その請求内容を見てびっくり。リスト化されたEさん夫妻の漏水被害の私物は、パソコン、ラグマットバスタオル、照明、サプリメントなど総額50万円。さらにEさん夫妻は賃貸で住んでいたため、貸し手側である物件のオーナーからも慰謝料を請求されました。
オーナー自体は住んでいないし、漏水事故では通常精神的損害は発生しないとされていることから、オーナーへの慰謝料は払う必要がないと判断。また、パソコンや照明は濡れてしまったものの問題なく使えること、ラグマットやバスタオルは洗って乾かせば使えること、損害賠償は時価になることを説明して、解決金12万円を支払うことで解決しました。
請求されたものについて、賠償する必要があるかを精査することが重要。かつ、漏水のトラブルは「払いません」と押し切るのではなく、解決金としてそれ相応の金額を払うことでお互いが納得する形ですっきり解決することも大切です。
【裁判ではこんな判例も!】専有部分で起きた排水枝管の漏水事故に共用部分としての判決が!
707号室に住む原告のF氏宅の床下を通っている排水管からの漏水が原因となり、607号室に住むG氏宅の天井に水漏れ事故が発生。F氏はG氏と管理組合に対して本件の排水管が共用部分であることの確認を求めるとともに、G氏に対しては水漏れによる損害賠償義務のないこと、また管理組合に対しては排水管の修理費用を立て替え払いしたとして、その求償金の支払いを求める訴訟を起こした。
最高裁では、本件の排水管707号室の床下にあるコンクリートスラブと607号室の天井板との間の空間にあること。排水管には707号室と708号室以外からの汚水は流れ込んでいないこと。707号室と708号室から排水管の点検修理を行うことは不可能であり、607号室の天井板の裏に入って点検修理を実施するしか方法がないことから、本件の排水管は専有部分に属さない建物の付属物にあたり、かつ区分所有者全員の共用部分にあたるとするのが相当、という判決が下りた。
専有部分専用の排水管は一般的に専有部分とされますが、この事例では共用部分と認定されています。共用部分か専有部分かは排水管の構造や設置場所などが考慮されるので、ケースバイケースで判断されるといえます。
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