《ようこそ!リノベの先輩(1)》リノベから8年。こうなりました(碧山邸)

リノベーション体験談

中古×リノベした先輩のお宅を訪ねて、リアルな声を聞く連載をスタートします。何年か住んだからこそ、説得力のあるアドバイスはこれからリノベしたい人にもきっと役立つはず!

photo:mori koda(now)、nobuyushi meguro text:rumiko abe

埼玉県富士見市
夫54歳、妻50歳、長女11歳
専有面積:93.00㎡(リノベーション面積53.70㎡)
建物の築年:1994年(平成6年築)
工事費(リノベーション時):685万円
設計:プラスエムアーキテクツ

可変性のあるリノベで「今ベストな生活の場」を手に入れる

知り合いの材木屋さんに勧められた国産タモ材のテーブルは、少々荒っぽく扱っても大丈夫。キズも焦げ跡も、味わいになっている。

建築家の碧山美樹さんは、8年前、当時築12年だった自宅マンションの南半分をリノベーションした。3歳の長女を保育園にあずけて仕事場に通う日々の中で、暮らしにくさを感じていたからだ。独立型キッチンは閉鎖的。古いカーペットは清潔とはいいがたい。和室がLDを狭くしている。そこで和室とキッチンを取り払い、分断されていたLDKをタイル貼りのワンルームに変えた。
西側にオープンなI型キッチンと、タモ材の大テーブルを配置、東側は可動家具で仕切って、3つのコーナーに分けた。夫のワークスペース、ソファを置いたくつろぎスペース、畳敷きの子どもスペースがLDと向かい合うように一列に並ぶ。家族が思い思いの場所にいながら、ゆるやかにつながっていられる心地よい空間が生まれた。
「これは第1期工事。子ども部屋が必要になったら、今回手をつけなかった北側の2室と水回りをリノベーションする予定なんです」と碧山さんは話していたが、8年たった現在、果たしてどうなっているのだろう?
あめ色になったタモの大テーブルは、味わいを深めている。椅子たちはほぼ以前のまま。大きな変化はないようだが、よく見ると、可動家具が実力を発揮して、2つのコーナーに微調整がほどこされていた。子どもコーナーにあった畳家具が中央に移動し、ソファはなくなっている。オモチャや絵本がいっぱいだったコーナーは、ちょっと大人っぽい雰囲気に。
「今の状態は想定外なんです。奥に子ども部屋ができたらソファコーナーを広げて、ちゃんとしたリビングにするつもりでした。ところが、10歳になってもここがいいって(笑)」
来年、長女は中学生。そろそろ第2期工事の計画が持ち上がっている。
「寝室とクローゼットに使っている北側の2室を一体化して、収納で囲んだ個のゾーンを3つつくろうかな、と漠然と考えています」
第2期リノベも可変性がありそうだ。そのときの家族にとってベストな暮らし方を探して、碧山邸は変わり続けるのだろう。

木のあたたかさもタイルの床の清潔感も、リノベ当時のまま。長さ3mの大テーブルで、食事で、おしゃべり、仕事など、多様なシーンが展開する

ソファがあったスペースに、子どもスペースの畳家具を移動。寝転んだり、洗濯物をたたんだり、多目的に使っている。畳を持ち上げると中は収納

畳を取り、学習机代わりのテーブルと椅子を置いた。パパお手製の赤いパーテーションを広げると、ちょうど視線が遮られ、「私の部屋」になる

8年住んでみてどうですか?碧山さんへのQ&A

Q1.コレはやってよかった! というものはありますか?

A.「長さ3メートルのダイニングテーブル。障子も断熱効果があり、おすすめです」
スペースを固定せず、組み替えられるようにしておいたこと。人生は予定どおりには行きませんから、使い方を決めつけないほうがいいのでは、と思います。大きなテーブルも正解。繊細なメープルやオーク材などと違って、タモはあまり気にせずにラフに使えます。あと、障子はいいですね。冬の朝、障子を開けると、冷気がどっと入ってきます。かなり断熱効果がありますよ。

Q2.8年の間に変えたところはありますか?

A.「子どもの成長やライフスタイルに合わせて少しずつ手を加えました」
畳だった子どもスペースは勉強部屋になりました。収納扉の面材に、長女が2歳のとき描いた絵を貼っていたのですが、その後なかなか描いてくれなくて(笑)、有孔ボードに張り替えています。キッチンの延長線上にあるカウンターには、ファイルや収納ボックスが増えました。私が家に仕事を持ち帰ったとき、このテーブルを使うので、資料なども置いています。

Q3.正直、もっとこうすればよかったかな、という点はありますか?

A.「コンパクトでも食品のストック類を収納できるパントリーをつくればよかったかな」
キッチンをオープンにしましたが、お米や野菜、ビールなどの食品ストック類をまとめて入れておける場所がないんです。押し入れ半間分でいいから、なんとか工夫してパントリーをつくればよかった、と今になって思います。また、これはケースバイケースなのですが、タイルの床。掃除がラクで気持ちがいいけれど、食器などを落とすと割れます。うちにはよかったけれど、向かないひともいるでしょうね。

碧山さんが住んでいるのは、複数の棟からなる郊外型の大規模マンションで、管理もしっかりしている。リノベの際は高性能の防音床下地を使うなどの配慮をして、ようやく隣人や管理組合の了承を得た。今ではすっかりコミュニティの一員。



+Marchitects(プラスエム・アーキテクツ)

自らの子育ての経験を踏まえ、暮らしの変化に柔軟に対応できるリノベーションを提案

中心価格帯
800 ~ 1,500万円

対応エリア
茨城県 / 栃木県 / 群馬県 / 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県

リライフプラスvol.17掲載

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