21/10/06 10:00 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(用途違反編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス Vol.41」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki
design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
お隣さん、民泊してない!?連日違う人が出入りして深夜まで騒ぐので迷惑です…。
隣人が民泊のために自宅を利用しているのでは?と疑っています。というのも、キャリケースを持った見知らぬ人たちが、連日マンションに出入りしている姿を頻繁に目にしていて、何度か隣人宅に入っていくのを目撃したことがあるからです。
不特定多数の知らない人が、自分の住むマンションに出入りするのは正直気持ちがいいものではありません。また、民泊の利用者らしき人たちが深夜まで飲み会かパーティをしているようで、とにかく騒がしくてとても迷惑しています。そのうえ、彼らが原因かは分かりませんが、深夜まで騒いでいた翌日は、マンション共有のゴミ置き場にお酒の空きビンや空きカンが散乱し、ゴミの分別がなされないまま捨てられていたりします…。
隣人は本人が自宅を空けるときだけ民泊として活用しているようで、ときどき廊下で挨拶する程度のお付き合いはしています。隣人なのでできるだけ大きな問題にはしたくありませんが、現状困っているのでどうしたらいいものかと頭を悩ませています。マンションの規約では、民泊の禁止が明記されているわけではないのですが、どう対処するのがいいでしょうか?
(東京都・Aさん・30代男性)
マンションの管理規約に民泊禁止が明記されていないと、今すぐ民泊をやめてくださいと言っても素直にやめないかもしれません。
まずは、現状隣人が自宅を民泊に利用しているかどうかが判明していないので、管理組合を通して民泊に利用しているかどうか確認しましょう。
同時に騒音やゴミ出しマナー違反で苦情が出ているという貼り紙をしてもらうことも。また、このような悩みを抱えているのはAさんだけではないかもしれないので、隣人宅の上下階の住人にヒアリングしてみるのもひとつの手です。多くの人が迷惑しているとなると、苦情を連名で理事会にあげやすくなります。かつ管理組合の理事会で民泊禁止を規約に明記するよう提案することも大切です。
規約の改正を行い民泊禁止が明記された場合、自宅を民泊に利用していた人に対しても、規約でも民泊は禁止されていますので民泊利用はやめてください、と言いやすくなります。それでもやめなければ、管理組合が規約違反を理由に民泊としての利用の停止等を請求することも考えられます。
隣人が民泊を認めない場合も想定されますので、隣の部屋に旅行者が入ったときの日付や人数をメモするなど記録を残しておくとよいでしょう。
実際の事例の一部を修正しています。
【CASE1】シェアハウス禁止のマンションなのに、賃借人がシェアハウスとして使っていた!
相談者のBさんはCさんに部屋を貸していましたが、そのCさんが勝手にシェアハウスとして複数人に又貸しして使用して困っているので、できることなら全員を追い出したいという相談でした。
マンションの管理規約にはシェアハウス禁止という条項があり、賃貸者契約には第三者を勝手に住まわせてはいけないことは明記されていましたが、Cさんは8人程度を同室に住まわせていたようです。
通常は建物明渡の裁判を起こすのですが、このケースで難しいのは、Cさんが特定できるだけでは十分ではなく、又借り人全員の氏名が分からなければ裁判に持ち込むことが困難という点でした。
そこで、まずは占有移転禁止の仮処分を請求。これは裁判中に住んでいる人が変わっても、新たな借主にも裁判の効力が及ぶというものです。
仮処分の際に執行官が又借り人を特定してくれましたので、又借り人にも建物明渡請求をすることができ、解決に至りました。
占有移転禁止の仮処分の際に執行官が集合ポスト内の通知を調べたり、室内の冷蔵庫の中を確認して又借り人の氏名を特定できたことがカギでした。氏名が特定できると住民票の取り寄せもできますし、裁判を起こすこともできます。
【CASE2】自宅でのピアノ教室の運営を咎められ…書道教室や学習塾なら許されるの!?
マンションの一室でピアノ教室を開いているDさん。
管理組合からピアノの音がうるさく、ピアノ教室としての利用は管理規約違反だからやめるように言われたましたが、Dさんにとってピアノ教室は生きがいなのでどうにかならないかという相談でした。
占有部分は住戸として使うというマンションの管理規約がありましたが、小規模の華道や茶道、書道、学習塾を開く場合は、平穏で良好な住環境を害さない限りにおいては許容される余地はあるとも考えられますので、Dさんと管理組合で再度話し合いをするようにアドバイス。
世の中の流れで習い事も増えているし、実際に事務所として使っている人もいることから、管理規約を一部変更しましょうという話になったようです。
住戸としての用途以外で使用している人に対しても1年以上の活動実績がある人は一代限り現在の用途での使用を許可することになり、Dさんもピアノ教室としての利用を認めてもらうことができました。
Dさん以外の住戸でも事務所や書道教室として使われていた部屋があったこと、また、ピアノの音が漏れないよう約200万円かけて防音工事を行い騒音対策をするなど真摯な対応をしたことなどが管理組合が譲歩してくれたポイントでした。
【裁判ではこんな判例も!】治療院としての使用は規約違反と認定。でも使用禁止の請求は棄却!?
住戸部分をカイロプラクティック治療院として使用していた被告E氏に対し、管理組合が治療院としての使用の禁止を求めた事案。
管理規約上は住宅部分を住宅以外の用途に使用してはならないと明記されており、治療院としての使用は管理規約に違反している。また完全予約制であるといっても、不特定多数の患者が出入りしているから良好な住環境とは言いがたく区分所有者の共同の利益に反するとして共同利益背反行為に該当すると認定された。
しかし、住戸部分29戸のうち、実際に住戸として利用されているものが2戸、不明が3戸、残り24戸はいずれも会社などの事務所として利用されていたところ、大多数の用途違反を長期間放置し、なんらの警告も発しないでおきながら、治療院について合理的な理由もないままその利用の禁止を求める行為は権利の濫用と言わざるを得ないとし、規約違反を認定しながら、権利の濫用であるとして請求を棄却した。
用途違反と認定はされながらも、権利の濫用として請求が棄却されたまれな事例。ほかの住戸部分の大多数が用途違反を行っておきながら、カイロプラクティック治療院だけの使用禁止を求めることが不適切と判断された。
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