22/06/22 10:00 投稿
あるある!マンショントラブルのケーススタディ(クレーマー対応編)
リノベーション・ゼミナール
大勢の人がひとつの建物に暮らすマンションでは、些細なことから大事件まで日々問題が起こりがち。そこで、多くのマンショントラブルを解決してきた桑田弁護士に、対処方法と過去の事例について話を聞きました!
「リライフプラス vol.43」掲載
illustration: koutaro numata
text: noriko sasaki
design: machiko hirata
桑田英隆弁護士
大規模修繕工事を行うため、各部屋の調査が必要なのに拒否し続ける人がいます…。
3年前から管理組合の理事長をしています。築42年の84戸のマンションなのですが、竣工後一度も排水管、通気菅の改修工事をしてこなかったため、配管がさびてしまって、箇所によっては腐食などの劣化が見られたため、排水管と通気菅の大規模修繕をマンション全体で行うことになりました。排水管と通気菅は共用部分にある建物を縦に通っている立管という部分と、横に張り巡らされて各居室に通っている枝管という部分で成り立っています。そのため、立管、枝管のどちらも今回改修工事をすることになりました。
この改修工事をするため、共用部分の立管はもちろん、枝管が通っている専有部分の各居室に入って、まずは配管の現状を調査する必要があるのですが、504号室に住んでいるBさんだけが入室を許可してくれず…。1戸でも調査ができなければ、工事を進めることができずとても困っています。
入室を拒否している理由は具体的には説明してくれないのですが「ここは私の部屋です。あなたたち専有部分に入る権利があるんですか?絶対にお断りします!」の一点張り。どう説得したら、調査のために部屋に入ることができるのでしょうか?
(東京都・Aさん・50代男性)
大規模修繕工事はもちろん、避難はしごの定期検査など、どうしても専有部分(室内)にいったん入らないとできない作業が発生した際に、入室を拒否する人というのはまれにいます。入室を拒否する理由は、ゴミ屋敷のように汚い部屋を見られたくないというケースや、プライバシー問題に異常に感度が高く、とにかく専有部分は自分の所有権があるから、人を入れるかどうかの判断は自分の権利だと主張するケースなど様々です。
ただ、結論からいうと、専有部分であろうと正当な理由がないのに入室を拒否することはできません。このことは区分所有法6条やマンション標準管理規約23条に定められていて、同条では「管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立ち入りを請求することができる」「立ち入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない」とあります。
Bさんには、右記の理由により拒否することはできないこと、また入室の候補日を多く挙げてこの中から希望の日時を選んでくださいという内容の書面を、理事長名か弁護士名で送ることをおすすめします。
実際の事例の一部を修正しています。
議案と関係ない質問や発言を繰り返して総会を妨害する人に、もう我慢の限界!
相談者は管理組合の理事長Cさん。毎回欠かさず総会、臨時総会に出席し、議案に関係ないことをずっとまくしたてるように話して会を中断させているDさんに困っている。今度臨時総会を開き、マンションの管理規約の改定を予定しているが、またDさんに妨害されないためにはどうしたらいいかという相談でした。
アドバイスしたのは、議長の発言や議案の内容について記載した進行表をあらかじめ作成しておくこと、想定される質問に対する回答を用意しておくこと、Dさんが不規則発言をしても必要なければ取り合わずに総会を進めること、議案と関係ない質問をされたら「それは今話し合っている議案には関係ありませんから」とのみ回答すること、でした。
後日、臨時総会に同席させてもらい、アドバイスどおりに総会を進めたところ、Dさんの主張、発言は今までどおりありましたが、臨時総会が著しく妨害されることはなく、無事管理規約の改定は可決されました。
臨時総会を中断させず進行させるために、Dさんに何を言われてもその都度取り合わないことが重要でした。また、進行表や回答を事前に用意しておくことで、説明義務違反にならないよう対策を練ったこともポイントです。
理事会を傍聴するのはいいけど、「傍聴する」の意味分かってる?
総会、臨時総会は組合員全員が参加できるのに対し、理事会はその名のとおり理事が集まって行うもの。しかし、その理事会を傍聴したいというEさんに心底困っているという、理事長のFさんからのご相談。Eさんは自分の意見を書いた文書を配布したり、勝手に発言をしたり、挙句の果てには理事長と口論をしたり…。とにかく理事会を妨害するのでとても困っていたそう。こういう場合、理事会の傍聴を拒否することができるのでしょうか?と相談に来られました。
「傍聴する」というのはあくまで聞くだけという意味なので、Eさんが行っていることは「傍聴する」の行為を逸脱したもの。住んでいるマンション全体にかかわる議案を話し合う理事会を組合員が傍聴することを一律禁止する必要はないのですが、今回のEさんの場合は、「傍聴」を超えて理事会の審議を妨害していたということで、理事会への傍聴を認めない旨の連絡を出してもらい解決に至りました。
常に傍聴禁止とする必要はありませんが、傍聴を認めるか認めないかは理事会に一定の裁量が認められることがポイント。Eさんのようなクレーマー以外の組合員に関しても、秘密性が高いなど議案の内容によっては傍聴を認めないことはあります。
【裁判ではこんな判例も!】組合員からの個別の質問に理事会は回答しないとダメ?
区分所有者であるG氏たち数人が原告となり、被告のH氏が理事長を務めた期間中または期間前の業務に関する文章の閲覧・写しの交付、および書面による報告をH氏に求めた事案。
管理者である理事長は、区分所有者の過半数が出席した総会で議決権の過半数により選任された理事数名の中から選出されたにすぎず、個々の区分所有者から直接管理者となることを委任されたものではない。つまり、理事長が個々の区分所有者の受任者(依頼を受ける人)であると見ることはできない。さらに区分所有法で、理事長は総会で毎年1回(定期総会で)その事務に関する報告をしなければならないことが定められていて、理事長は総会を招集するとともに、総会で報告することが予定されている。
もし、報告を怠ったときは、区分所有者の1/5以上で管理者に対して集会を招集するよう請求する権利があるので、その方法を取ることもできるとの判断に至り、原告らの請求は棄却されました。
多くの人が勘違いしがちなケース。区分所有者である組合員が質問すれば、理事長はなんでも答える必要があると思っている人が多いかもしれないが、そのような義務は理事長にはないという判断が下された裁判例。
専任のアドバイザーに相談してみよう
あなたに最適なリノベ会社を無料でご紹介いたします。